

「コンビニ百里の道をゆく」は、40代のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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コンビニ戦国時代、コーヒー戦争、出店合戦……など、私たちの業界についてはよく競合他社とのライバル関係を強調した表現が使われます。でも、ローソンが常に競合他社を意識しているかというと、答えはNO。ローソンが意識しているのは「お客さま」だけです。
お客さまの生活ニーズが日々どう変化しているのかを把握し、全国に1万4千ある店舗や物流網、グループのすべての「ハード」をそれにどう適合させるか。これが、われわれの商売のすべてと言っても過言ではありません。これができなければ、衰退していくだけだと思います。
私たちの持つ「ハード」は、単に「モノを売る場所」ではありません。みなさまの生活拠点や会社の近くに、必ずその地域に寄り添う店舗があります。自宅まで商品を届けてもらうのに抵抗がある人も、すぐ近くに受け取れる場所がある。お客さまの生活のあらゆることに対応できる「ハード」であって、これを持つことは大いなる強みなのです。
その上で、いかにしてローソンに来ていただくかを考える。端的に言えば、ローソンでしか買えないもの、ローソンでしか得られないサービスがある。これが最初の勝負です。おにぎり、ブランパン、スムージーはもとより、トイレットペーパーでさえもローソンでないとダメと言ってもらえるようになる。次に、お客さまが何を求めていらっしゃるかという「兆し」をキャッチして、イノベーションを起こしていく。
幸い、ローソンは「兆し」をキャッチするのは得意です。ブランパンも、糖質制限が注目される前の2012年に発売。最初はなかなか評価されませんでした。でも、早く目を付けて粘り強く改良を重ねたからこそ、ローソンを代表する「差別化商品」になったのです。
競合他社に「兆し」を捉えた商品があれば、それは私たちが見逃していたということ。横を見るのではなく、まっすぐお客さまを見る。これを忘れてはなりません。
※AERA 2017年12月11日号