少子化の波が大学経営を揺さぶるなか、郊外キャンパスの「都心回帰」が顕著だ。異変の渦中にある都内随一の学園都市・八王子市を歩いた。
【写真】パルテノン神殿ふうな 杏林大学の「井の頭キャンパス」
シミ一つない外壁。ピカピカに磨かれたガラス窓。地面には落ち葉以外、ゴミらしいものは一切見当たらない。校舎や研究棟がそびえ立つキャンパスは、まるごと瞬間冷凍パックされたような静けさに包まれていた。
杏林大学は昨年4月、東京・八王子キャンパスの保健、総合政策、外国語の3学部を都心に近い三鷹市の「井の頭キャンパス」へ移転。3500人の学生が去った今、八王子キャンパスに通うのは運動施設を利用する一部のスポーツ部員に限られる。
「いつでも使える状態です」
大学職員が告げた通り、東京ドームの3倍近い、約13万平方メートルの施設の保守管理は、緑の手入れを含め維持されている。大学側はこの用地を「八王子市の理解も得ながら早期売却を図る予定」としているが、具体的な結論には至っていない。
ユニホーム姿の野球部員に声をかけてみた。茨城、栃木県出身の2人の3年生部員は徒歩5分の下宿暮らし。キャンパス移転について口々にこう話した。