隣の芝生は青く見えてしまうもの。学生時代、通学路で出会う他校のお洒落なブレザーやセーラー服、自由な私服姿に憧れを抱いた経験がある人は少なくないはずだ。菅公学生服学生工学研究所の原田季典部長によると、現在私服の高校は全体の2%程度で、1970年代に起きた制服自由化の名残という。地域は東京、長野、北海道が中心。最近は制服の人気が高まる傾向にあり、首都圏を中心に再制服化を進める学校もあるとか。この動きについて原田部長は「高校生であるというアイコン=制服という認識が強くなっていることや、保守的な若者の増加が要因の一つでは」と分析する。
【写真】制服「自由着用」ICU高校の「タクアンネクタイ」って?
近年はブランドやアイドルとコラボして制服を刷新し、生徒獲得を目指す動きもある。ただそこでネックになるのが卒業生の存在だ。実は伝統校になるほどその傾向は強く、今回取材を依頼した、制服を見直した複数の高校から「同窓会を刺激したくない」と断られたことからも事情が透けて見える。
そんな舵取りの難しい時代、東京都内にある共立女子中学・高校(共立)は制服のリニューアルにこぎ着けた。60年近く、ダブルボタンのブレザーにボックススカートという組み合わせだったが、数年前から生徒や保護者から「時代に合わなくなっている」との声が聞かれるように。一方で共立は親子2代で入学するケースもあり、OGからは「娘に自分と同じ制服を着せたい」という声も少なからずあった。
次世代の生徒や保護者にも親しまれる制服をどう作り上げるか。白羽の矢を立てたのは、第1期生で同窓会会長のブライダルデザイナー、桂由美さんだ。
桂さんが提案したのは、ピンク系のシャツにブルーのネクタイの、上品、かつ今風なデザイン。これが心をつかんだ。
「流行より伝統や品格があるほうが保護者は安心感がある。『共立に通っている』と誇らしくなれるような制服が求められていたようです」と児島博之校長。当初は来年度の新入生から購入できるようにするはずが、生徒から強い要望があり、在校生も自由に購入できるようにしたのだ。児島校長は続ける。