経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、経済について鋭く分析します。
* * *
衆議院選挙が終わりました。予想通り与党の圧勝ですが、安倍政権はこれで自分たちが信任されたなどとは思わないほうがいい。「消費税増税で幼児教育を無償化する」などと最初は威勢が良かったが、「小池の乱」以降、安倍さんは北朝鮮の問題しか触れていませんね。
つまり、野党より自民党がマシだろう、という点のみが得票のポイントであって、時事ネタを得意とするコント集団「ザ・ニュースペーパー」の表現を借りれば「どこに行くか目的地がわかっていないタクシーより、暴走してもちゃんと目的地に着くタクシーのほうがまだまし」という究極の選択を国民がさせられた結果と考えたほうがいい。
経済政策については安倍首相は有効求人倍率の回復と株高を声高に叫ぶわけですが、問題は国民一人一人が豊かになっていると実感できるかどうか。事実、個人消費支出はあの震災があった2011年3月の数字にさえ及ばない。どれだけの国民がそういうマクロの数字と裏腹に窮乏生活を強いられているのか、安倍首相以下、自民党の議員は現実を知るべきです。
税金についても呆れかえることばかりです。税と社会保障の一体改革として消費税を上げましたが、3%上げた消費税分のどれだけが実際の社会保障に使われ、国民生活を豊かにしたのか、という検証がいまだになされていません。国税庁のHPには、今でも社会保障と税の一体改革においては、「消費税率の引上げによる増収分を、すべて社会保障の財源に充てます。このようにして安定財源を確保することで、社会保障の充実・安定化と、将来世代への負担の先送りの軽減を同時に実現します」と書いてあります。振り返ってみれば全くの嘘だった、というしかありません。少なくともワタクシの給与明細では社会保障費は消費税が8%に上がってからも上がる一方であります。一体どこが負担先送りの軽減だというのでしょうか。
野党もだらしない。枝野さん含め、野党が「増税もやむなし」などと言っている限り受け皿にはなり得ません。社会的弱者を救済するつもりがあって、国民に寄り添う気があれば、消費税をゼロに戻すくらいの決断が必要でしょう。大義なき解散と言われましたが、野党の政策の貧困さを含めて溜め息しかありません。
※AERA 2017年11月6日号