老後資金や子どもの教育資金――。お金の悩みは尽きない。マイナス金利の今、貯金だけじゃダメだと分かっているけど……。金融商品に下手に手を出して金融機関の言いなりになって損をすることも。AERA 10月9日号では「資産運用」を大特集。こんな時代だからこそ、本当の投資を教えます。
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日本では、投資信託の販売手数料や信託報酬は、なぜ割高なのか。日本の戦後史を振り返ると状況が見えてくるというのはファイナンシャルプランナーのカン・チュンド氏だ。
「戦後の財閥解体で株式が大量に放出されました。市場で供給過多になってしまうので、その受け皿として、パッケージ化(投資信託)して販売されることになったのです。政府から運用の免許が与えられたのが証券会社。その後、証券会社は子会社として運用会社を作り、運用を命じて、自分たちが販売手数料を稼ぐビジネスモデルをつくったのです」
運用する会社よりも、販売する会社のほうが力を持ってしまったという歴史的な経緯があるのだ。なので、窓口には運用の視点から「いいもの」ではなく、「売りやすいもの」が並ぶようになったと言われている。証券会社の窓口に行くと、系列の運用会社の投信を薦められることが多い。
一方、イギリスなどでは、古くから貴族などの富裕層の資産を孫やひ孫の代まで運用するといったプライベートバンキングのニーズがあった。このため運用会社が発達し、運用会社が販売会社である証券会社に販売を委託するスタイルが早くから確立されていた。さらに投資信託の開発も、日本と比べてかなり昔から行われていたという。
「1868年にイギリスで外国債券に投資する投資信託が発売されたのが最も古いと言われています」(カン氏)
投資の先進国、アメリカでは1970年代に確定拠出年金(401k)がスタートするなどし、投資教育もあわせて行われたこともあり「長期投資が基本」という考えが根付いた。一方、日本では確定拠出年金がようやく導入されたのは2001年から。
「日本はつみたてNISAが導入されることで長期投資できる環境が整ってきました。いい投信、いい金融機関はどこかといった投資家への教育が浸透すれば、投資の失敗を防げるようになるでしょう」(同)
(ライター・村田くみ)
※AERA 2017年10月9日号