北朝鮮による6度目の核実験で飛び出した、非核三原則の一つ「持ち込ませず」の見直し論。「国是」の虚実を突く問題提起に、安倍政権は冷淡だ。
* * *
9月11日の防衛省講堂。安倍晋三首相は毎年恒例の自衛隊高級幹部会同で、「北朝鮮の脅威を抑止しなければ。米国と具体的な行動をとっていかなければなりません」と訓示した。
同じ壇上には来賓として歴代防衛相が並ぶ。石破茂氏は時折斜め上を見やり、中谷元氏は安倍首相を見つめた。
北朝鮮が8日前の9月3日に行った6度目の核実験を受け、石破・中谷両氏は、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」を謳う非核三原則のうち「持ち込ませず」について議論が必要と発言していた。特に石破氏は、「冷戦期の中国の核実験当時から議論は進んでいない。米国が核の傘を差してくれなかったらどうなるのか」と、この原則の見直しを唱える。
●「持ち込みOK」の効果
1960年代、中国初の核実験をふまえて米国が日本に「核の傘」の提供を約束し、当時の佐藤栄作首相が非核三原則を表明するまでの経緯は末尾コラムの通りだ。非核三原則は国民の反核感情と響き合い、歴代内閣は「国是」(安倍首相)として受け継いできた。
だが、「持たず、作らず」を米国の核の傘が支えるなら、「持ち込ませず」はその傘を避けるかのようで矛盾する。米国と、ロシアの前身ソ連が対峙(たいじ)した冷戦期には、互いに大量の核を持ちながら報復を恐れて使わなかった。それがいま、独裁国家の北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、日本を脅かしている。「持ち込ませず」のままでいいのかという危機感が、安全保障の論客である石破氏にはある。
石破発言に対し、菅義偉官房長官は6日の記者会見で「非核三原則を見直す議論は考えていない」と一蹴。前外相の岸田文雄・自民党政調会長は7日に「米国の核抑止力に不備があるとは考えない」、小野寺五典防衛相も8日に「拡大抑止(核の傘)を含めた米国の態勢は変わっていない」と記者団に語った。