「都心部の新築マンション価格が70平米換算で平均6500万円を超えているのに、このエリアは都営新宿線、東京メトロ有楽町線・東西線など複数路線が使えて交通の便がよい割に価格が抑えられている。結果、ファミリー層の人気が高まっている」

 江東区保育計画課保育計画係は、14年度に策定した「こども・子育て支援事業計画」をもとに今後の0~5歳児人口を算出して需要を予測し、19年度までの整備計画を策定。保育施設の準備を進めているが、保育需要が予測を上回り、保育施設の定員数も計画に追いつかない。

「結果として待機児童は解消しておりません」(担当者)

 タワーマンションもある同区の東京テレポート駅は、潜在待機児童数がマイナス2だが、新築マンション価格は70平米換算で7千万円台。今後、20年の東京五輪に向けて臨海部の開発が進むことで、区内の偏差は解消されるだろうか。

 潜在待機児童数が多い駅としてランキングに入った各駅は、中央線の駅であり丸ノ内線の始発駅でもある荻窪駅や、有楽町線と副都心線が交わり2方向へのアクセスがいい上、マンション価格が比較的抑えられている地下鉄成増駅など利便性と住宅価格のバランスのいい駅が中心。

 前出の澤氏によれば、成増駅に隣接する練馬区は板橋区からの保育園入園を受け付けているが、練馬区も認可保育所の0歳児定員は余裕がなく、需給バランスの改善には至っていないとみられるという。

 9位の用賀駅は、都心部へのアクセスの良さなどでもともと住宅地としての人気が高いのに加え、駅近隣に0歳児を受け入れない認可園が多いことが、潜在待機児童数を押し上げている。

●面と点でデータにズレ

 なお、潜在待機児童数は、各自治体が公表する地域別の待機児童数とは必ずしも一致しない場合がある。

 例えば、冒頭の世田谷区の調査では、「用賀」エリアは保育需要は最も低い「E地域」に分類されている。世田谷区が「面」で需要予測をしているのに対し、今回は「用賀駅」という「点」を中心に潜在待機児童数を算出していることが、このズレの原因だろう。

 厚労省や自治体の発表数値とも照らし合わせたうえで、有効活用してほしい。

(編集部・作田裕)

AERA 2017年9月18日号