保育園申し込みの際に「居住年数」を重視するところもあって、一朝一夕に引っ越すことは難しいが、この「偏差」を知っておくことは、子育て世帯にとっては有益だろう。「子どもはまだ先」という夫婦にとっても、将来的にどこに住むかを決めるための指標になる。
住宅ジャーナリストの榊淳司(さかきあつし)氏は語る。
「住宅購入を検討している共働きの子育て世代にとって、保育園事情は最優先事項と言ってもいい。気に入った物件があっても、近くの保育園に空きがなければ、何駅も先の保育園に預けることになりかねない。せっかく利便性の高い場所に高額な家を買っても、本末転倒です」
そこでアエラは、分譲マンション購入検討者向け会員制サイト「住まいサーフィン」のデータをもとに、東京23区内の392駅について、2017年4月時点の「0歳児の潜在待機児童数」を推計した。
各駅ごとの「0歳児の潜在待機児童数」を示すことで、公表されている行政区単位の待機児童数だけでははっきりしなかった「偏差」を、路線図の形で明示できた。併せて住宅価格や家賃の相場を知るために、「住まいサーフィン」が調査した各駅付近の新築マンション(16年)の70平米換算価格で色分けした。
区立の認可保育所で0歳児の募集をしていない江戸川区内の駅の数字はあくまでも参考値なので、「保育園に入りにくい駅」のランキングでは、江戸川区内の駅を除いている。
●実は穴場の自由が丘
まずは目黒区を見てみよう。
厚労省の発表では目黒区の待機児童数は617人(17年4月時点)で、23区では世田谷区に次いで2番目に多い。だが、目黒区内にある駅の潜在待機児童数にはばらつきがある。
都立大学駅が117人、祐天寺駅が71人と多い一方で、自由が丘駅は「マイナス4」。70平米換算の新築マンション価格はすべて7千万円台で大差ない。同じ東横線沿線なら、特急も止まる自由が丘駅のほうが、楽に保育園に入れる可能性があるということだ。
23区内で潜在待機児童数が最も多かったのは、265人の足立区・北綾瀬駅。足立区では他にも、162人の竹ノ塚駅、134人の大師前駅がワースト15駅にランクインした。
「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトの澤邦夫氏は、その背景をこう分析する。