仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号は「仕事と子育て」を大特集。
厚生労働省が発表した最新の待機児童数は2万6千人超。東京23区の駅にその数をひもづけたら、解決の糸口が見えてきた。
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9月1日、厚生労働省は今年4月1日時点の待機児童の数が2万6081人にのぼると発表した。昨年比2528人増で、3年連続の増加となった。
認可保育施設の定員は約274万人で前年より約10万人増えた。同時に、利用希望者も約9万人増えて、過去最高の約265万人に。それでも、認可保育施設の定員を上回っているわけではない。にもかかわらず、待機児童が減らないのはなぜか。
大きな要因は「ミスマッチ」だ。
待機児童の約89%が0~2歳に集中。厚労省は「地域によって希望者が偏っていることも、待機児童の増加につながった」と分析している。
●同じ区でも偏りがある
実際、全国で待機児童数が最も多い世田谷区(861人)でも、全域で保育需要が高いわけではない。同区公表の地域別保育需要(7月27日時点)によると、5段階で最も需要が高い「A地域」は池尻、下馬、瀬田、玉川、松原など11地区。逆に、宇奈根、鎌田、粕谷、羽根木、野毛など22地区の保育需要は最も低い「E地域」とされている。
これだけ見ると、「低需要」の地区が「高需要」の2倍あることになる。
「人口流入が加速しているのは駅周辺の利便性の高い場所。そうした立地の住宅は働く人には都合がよく、0~3歳の低年齢児を抱える世帯が住むのに十分な広さの賃貸共同住宅が多い。低年齢児を抱える共働き世帯が常に入れ替わりながら居住している可能性が高く、この地域の保育需要はいつまでも高い状態で推移する傾向があると考えられます」(世田谷区広報広聴課の担当者)
つまり、待機児童数ワースト1の世田谷区でも、居住する場所によって認可保育所への「入りにくさ」は異なるのだ。