注目を集めるための仕掛けが過剰に振れすぎた時、共感を求める視聴者の意識と大きくずれ、炎上につながる。中でもサントリーや宮城県のようにセクシュアルな表現に踏み込んでいるものは、そもそも国際的に見て許されない状況となっている。
炎上案件の増加は日本だけでなく米国でも顕著で、特にあらゆる差別的表現を排そうとするポリティカルコレクトネス(ポリコレ)を旗印にした「言葉狩り」の傾向が強まっている。批判に弱い日本がこの潮流に巻き込まれれば、表現の幅がますます狭まることにもなるだろう。
「100人が100人賛成するものはできないし、インターネット上では怒りの感情のほうが伝播しやすい。作り手側は批判を想定して、自分たちの意図を説明できるような心構えをしっかりしておく必要があります」(岡本さん)
牛乳石鹸は冒頭のCMについて「家族や息子のことを大切に思いながらも、時に迷いながら、それでも前を向いて毎日頑張っている父親の姿を描いています」と説明している。果たしてその意図が的確に伝わるCMだったのか。徳力さんは「広告は企業を好きになってもらうためのもので、誤解を招くような表現はそもそも不適切」とも語る。(編集部・取材班)