「僕がブレークすることなんてないと思ってましたから。ずっと来る球を打ってきて、そこは何も変わってない。ありがたいけれど、本当に今まで通りなんです」
ヌードには、長年のファンから、「そっちにいかないで」との声も上がった。
「その方たちには、『ごめんなさい』と言う以外ないです。俳優であるために、多分、僕は何者にもなりたくないというのが常にあるんです。僕という実体が自分自身でもわからなくなる状況を楽しんでいたいので」
男女を問わず幅広い年齢層に支持されるのは、存在感と巧さゆえ。最近、年配の男性から手紙がきた。「あなたがいることによって作品が面白くなる。本当には送れないのでこの絵を送ります」と、丸い桶にすしが詰まった絵が入っていた。
「もうすっごいうれしくて! 今も部屋に飾ってるんです」
静かな佇まいと端正で知的な語り口調が転調し、お茶目に笑った。(ノンフィクションライター・島崎今日子)
※AERA 2017年8月14-21日号