●初心者にはお化け屋敷
VRゴーグルを使ったアトラクションの欠点は、「VR酔い」。車酔いのような状態になりやすいことだ。VRゴーグルで見る映像と、実際の身体のズレによって起こる。アトラクションの多くは1回5~10分間程度だが、4~5個のアトラクションを体験するとドッと疲れる。
VR酔いを避けて楽しむにはどうしたらよいのか。
まずは、酔いにくいアトラクションから体験しよう。やってみないと酔いやすいかどうかがわからないことが多いので、スタッフにおすすめを聞くのがいい。記者が体験したアトラクションの中では、冒頭のマリオカートのような座って楽しむタイプより、歩きながら体験するなど、実際に身体を動かすタイプのほうが、不快感や酔いを感じにくかった。
この意味で初心者におすすめなのが、VRゴーグルをつけて室内を自由に歩き回るVRお化け屋敷「CORRIDOR(コリドー)」だ。8月末まで東京・赤坂サカスのイベント内で体験できる。
VRゴーグルをかぶって、2人1組で楽しむ。VRゴーグルはパソコンとつないで使うため、行動範囲に制限があることがほとんどだが、リュックのようにPCを背負うことで、5×8.5メートルの室内を自在に歩き回れるようにした。
VRゴーグルにヘッドホン、片手にはランタン。そしてもう一方の手でパートナーと一緒に輪投げの輪のようなものを持って、古くて暗い洋館の中を歩く。床には「魔法陣」のような幾何学模様が浮かび上がり、経路が示される。ひとつずつ部屋を訪ねると、おばけが出てきたり小さな虫が部屋中にいたり……。
暗い屋敷の映像を見ながらゆっくり歩いていくため、映像と身体の動きのズレが起きにくく、結果的に酔いにくい。また、作り込まれた映像が美しいので、不快感がない。ファンタジーの物語の世界に入り込むVRらしい体験ができる。
制作を手掛けたティフォンの深澤研CEOがイメージしたのは、「子どもの頃から好きだったディズニーランドのホーンテッドマンションのような体験」だという。
●ルアー釣りが「上達」
VR施設でできるのは「なりきり」体験だけではない。
前出「VR ZONE SHINJUKU」の「釣りVR GIJIESTA(ギジエスタ)」ゾーンではその名の通り釣りを体験できるが、これを繰り返していればおそらく、釣りの「スキル」が身につく。
釣り竿を右手に持ちVRゴーグルをかぶると、山に囲まれた湖畔の風景が広がった。体験するのはルアー釣り。2人でルアー釣り対決をして、6分間に釣った魚の数とサイズを競う。小学生のころにやって以来だが、とりあえず、ヘッドホンから聞こえるスタッフの指示通りにやってみる。
「大きく竿を振りかぶって、振り下ろすときに、向こうの山を指さすようにしてリールから指を離してください」
何度か練習すると、ルアーが遠くまで飛んでいくようになった。ゆっくりリールを回すと魚がかかったようで、釣り竿が引っぱられるような感覚。急いでリールを回すと、釣り竿の先には大きな魚が。思わず「やった!」と声を上げてしまった。
この夏は、遠くに出かけなくてもいいのでは。(編集部・長倉克枝)
※AERA 2017年8月14-21日号