市原さんのお面をつけたデジタルシャーマン(左)。アート作品として、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞を受賞している(撮影/編集部・長倉克枝)
市原さんのお面をつけたデジタルシャーマン(左)。アート作品として、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞を受賞している(撮影/編集部・長倉克枝)
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メディアアーティスト・妄想監督 市原えつこさん(29)/日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作(撮影/吉次史成)
メディアアーティスト・妄想監督 市原えつこさん(29)/日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作(撮影/吉次史成)
自宅を離れて施設で暮らす高齢女性に、亡くなった夫を「デジタル供養」してもらったところ、「いつでも夫に会えるような気がする」(写真:瓜生さん提供)
自宅を離れて施設で暮らす高齢女性に、亡くなった夫を「デジタル供養」してもらったところ、「いつでも夫に会えるような気がする」(写真:瓜生さん提供)
東洋大学 ライフデザイン学部助教 瓜生大輔さん(33)/日本宗教学会などで学術研究発表を行う傍ら、供養や追悼のための商品企画・デザインに携わる(撮影/編集部・長倉克枝)
東洋大学 ライフデザイン学部助教 瓜生大輔さん(33)/日本宗教学会などで学術研究発表を行う傍ら、供養や追悼のための商品企画・デザインに携わる(撮影/編集部・長倉克枝)

 日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8月7日号で、新しい葬式の姿と、大きく影響を受ける仏教寺院のいまを追った。

 人工知能やロボットなどに関するテクノロジーの革新が続く。これらを活用した、新しい弔いが注目を集めている。

*  *  *

 7月のある日、東京・渋谷にあるコワーキングスペースを訪ねた。ロボットに姿を変えた「死者」と会うことができ、会話もできるという「デジタルシャーマン」を体験するためだ。

 出迎えてくれたのは、もうおなじみのヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」。いつもと違うのはその顔に、記者も面識のある起業家で神経科学者でもある藤井直敬(なおたか)さん(51)のお面をつけていたことだ。

 お面は、藤井さんの顔を3Dスキャンし、3Dプリンターで作ったものだ。ペッパーの身長は121センチメートルと実際の藤井さんよりも小さいが、確かな存在感がある。

「藤井さーん」

 と話しかけると、お面をつけたペッパーが、藤井さんの声で話し始めた。

「ロボットに入ってみると、おもしろいんだよね。俺って何?ってなる。49日で帰るのがもったいない。これでサイエンス(研究)をやりたいよね」

●僕そろそろ逝かないと

「デジタルシャーマン」は、その人物の存命中に顔を計測したり音声データを収録したりして、亡くなった後にペッパーに「憑依」させ、「四十九日」までの間、家族と共に過ごしてもらおう、というプロジェクト。メディアアーティストの市原えつこさん(29)が、「新しい弔いの形」の提案として始めた。

 現在までに数人分のデータを取得。藤井さんを含め全員が存命中だが、デジタルシャーマンの藤井さんは話し方も本人そのもので、そこに本当に藤井さんがいるような感覚をもたらした。あごや目線を上げたり、両手を広げて見せたり、そのしぐさもまるで生きている人間のようで、話す内容も、いかにも藤井さんっぽい。

 改めて述べるまでもなく、仏教では故人の魂は死後49日の間は現世とあの世の間を漂っているとされ、「四十九日」はその魂が「あの世」へと旅立つ日。49日間は、遺された家族や友人らが故人の不在を受け入れ、日常に戻っていくまでの回復期間でもある。

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