ビアガーデン人気が止まらない。デパートやビルの屋上のみならず、レストランやバーのテラス席が人気を博し、見渡せば、駅でも、屋上でも、人々は杯を交わしている。人はなぜ、ビアガーデンに向かうのか。
7月の土曜日。営業開始の16時前から人が集まりだしていた。家族連れ、女性同士、男性同士のグループ。緑化された壁面の緑が目を引くが、日はまだ高く、熱気が残っている。
東京・西武池袋本店9階屋上の食と緑の空中庭園では、4月末から10月初旬まで「天空のビアテラス」と銘打ち、ビアガーデンを営業している。あちこちから聞こえるのは乾杯の発声。サーバーのもとにはジョッキ片手に客がひっきりなしに訪れる。ビール、黒ビール、サワー、ワイン、各種ソフトドリンク。
この日、「どうしてもビアガーデンに行きたい」と訪れた20代の女性2人連れは、中高時代の同級生で社会人4年目。バーベキューをつつき、時折スマホを覗きこみながら、懐かしい話に花を咲かせていた。
女性客は多い。友人と屋台料理を楽しむ30代女性がここを選んだ理由は開放感だという。
「最近、野球観戦にハマっていて、週末は頻繁にホームチームの屋内ドームにいます。先日、はじめて明治神宮野球場に行ったのですが、格段によかった。ここもそう。屋外は気分の上がり方が違います」(30代女性)
見渡すといつの間にか満席。宵が深まり、庭園を彩るウォーターテーブルや草花がライトアップされる頃合い、空は茜や紫が混じり、マジックアワーのような趣が出る。
子どもを遊ばせながら語らう夫婦もいれば、豪快に飲み続ける男性グループや老紳士の一団、見つめ合う恋人同士もいる。晴れた夜空の下、それぞれがそれぞれの世界に没入している。
●「レジャーとして定着」
ビアガーデンといえば今、異変が起こっている。もはや、会社帰りのおじさまたちが訪れるレトロな飲みの場ではなくなり、老若男女が訪れる憩いの場所に進化した、というのだ。
ビアガーデン評論家でトレンドウォッチャーのカシハラヒデコさんは、10年以上にわたり、全国のべ500軒ものビアガーデンを訪ね歩いてきた。
カシハラさんによると、ビアガーデンの変化はまず、リーマン・ショック後に現れた。
「今でこそ当たり前ですが、食事と飲み放題がついて4千円前後という価格設定に、お得感もあったのでしょう。屋外の開放感と、バーベキューや屋台料理などイベント感も味わえる手近なレジャーとして定着した印象です」(カシハラさん)
5、6年前になると、女子会ブームも重なり、2007年当時は都内で30軒足らずだった都内のビアガーデンが、現在は200軒に迫る勢いという。
「客層の女子率もかなり上がりました。以前は3割程度という印象でしたが、女子層をターゲットにしたビアガーデンも登場し、客のほとんどが女子というところもあります」(同)
主宰する「東京ビアガーデン制覇クラブ」の会員は男女半々だが、実際の飲み会に参加するのは7割が女性だ。