一方、人間関係は一切なし。2児を持ち首都圏に暮らすワーキングマザー(42)の趣味はひとりカラオケ(ヒトカラ)だ。
「子育て中なので、ちょっと時間が空いた時にサクッとできるストレス解消法を考え、ヒトカラに行き着きました」
いいとこどりの関係
1時間歌うだけでリフレッシュできる。ドリンク付きで300円台とコスパもいい。
「大勢でカラオケに行ったあと、ヒトカラで歌い直すという友人がいますが、その気持ちはよくわかります」
週1ペースで満喫しているが、人に趣味を聞かれたときには「ヒトカラ」とは答えない。
「社交性のない性格だと思われてしまいそうで……。内緒です」
人と適度なコミュニケーションがとれ、それでいて人間関係の煩わしさはなし。そんな「いいとこどりの趣味」があると、大学教授の女性(60)は言う。オンラインゲームだ。
「オンラインで知り合った人たちとチームを組んで楽しんでいます。ドラクエX(テン)がきっかけで、始めたころは小学生だったチームメイトが高校生になったり、高校生の子が社会人になったり。長い付き合いになりました。付かず離れずの距離感がいいのだと思います」
性別も年齢も明かしていない。人間関係が煩わしくなれば、別に登録しているキャラを操作するなど回避の手段もあるという。
「老後の趣味にいいよって周りに勧めています。手先さえ動けばだれでもできるし、異年齢の人たちとも友だちになれる。コミュ力が乏しくても、小学生や中学生がタメ口で『フレンドにならない?』って誘ってきてくれるから大丈夫です(笑)」
バーチャルとリアル。嘘と本当が交錯する趣味界。「趣味は何か」という単純な問いに、なぜ人はこうも攪乱されるのか。そして煩悶の先では、だれもがノビノビと楽しげにしている。そうさせるものは何か。
(編集部・石田かおる)
※AERA 2017年7月31日号