経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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先週、Uber(ネット配車サービス)の優位性を、フランスでの実体験を通してご報告したところ、案の定、各所から抗議を頂きました。こちらには、いわゆる「敵に塩」を送った場合の市場の広がりについての実証データはいくらでもあるので、それをもって反論すると、その後、反論はありませんでした。本人たちもわかっているけど、誰かに何らかの「忖度」をして「反対」と言っているのかな、と感じました。
さらに話を進めていくと、宅配便ドライバーの過剰労働が問題になっており、ヤマト運輸などは宅配しない時間帯を決めました。しかし、アメリカでは、アマゾンはすでに一般人が商品を宅配する「アマゾンフレックス」という配送システムを導入しており、大変な好評を得ています。
これもUberとよく似たシステムで、もちろん最初に面接してどういう人かしっかりチェックをするところから始まります。地域によって差はありますが、通常1カ月前から就業時間を予約することが可能(1日2時間から12時間まで)で、前日でも空白があれば働くことができます。
しかし、日本ではこれらはいずれも許認可制度の壁(二種免許や運送業許可)に阻まれて我々普通の個人は参入できません。こういう話をすると、業務に関わる人の安全が担保できないという人が必ず出てくるのですが、あれだけテロや事件が起きているフランスやアメリカでできて日本でできないはずはありません。特に過疎化が進む地方は、バス路線も宅配便も維持コストがかさんで赤字になっているので、「住んでいる人」を労働力として使うメリットは計り知れないのです。
私が岩手に住んでいた感覚からすると、リビングコストが極めて安いので、2畝程度の畑を持っていてUberとアマゾンフレックスで働いたら十分生活できそうです。夜は経験を生かしてワインバーの経営なんかもできるでしょう。つまり地方では相当な自由度で暮らすことが可能で、地方創生はこれが切り札になり得るのです。
思えば、「3本の矢」の第3の矢の目玉は規制緩和だったんですよね? タクシーも宅配も規制緩和できないで、冗談としか思えません。規制緩和で経済成長を促し、働き方改革まで起こす可能性があることを忘れてはいけません。
※AERA 2017年7月3日号