ネット中堅:親会社の意向を受けた上層部が、ネトウヨから攻撃されるのを過剰に恐れている。炎上して、広告に影響が出ると困ると。そのため、2年ほど前から「政権の揚げ足取りのような記事はダメ」「あまりに左に振れた記事は出さないように」という注意がメールで来るようになりました。

ベテラン:テレビの場合は、複数のニュースを見比べるということが難しく、視聴者が情報を「取捨選択」しにくい。そのため、ストレートニュースでは中立性、公平性には想像以上に神経を使っています。視聴者に違和感があると、相当数のクレームが来るからです。

●働き方改革をアピール

中堅:テレビの記者は契約社員などの人も多くなっている印象がある。18時になると、契約時間外だからと、夜回りはせずに帰るスタイルの記者をよく見るようになりました。

若手:新聞でも、「働き方改革」として、日経新聞が一時期、政治部記者の夜回りをやめていました。夜回りをやめて記事のクオリティーが下がるかどうかをみる「社会実験」だったとか。結果的には紙面の質に変化はなかったようです。今は夜回りも復活しているようですが、これに追随して、今後は他社も「夜回り禁止令」が出るかもしれない。

ベテラン:電通の過労自殺事件の後、上層部には「次に狙われるのはマスコミだ」という危機感がある。どこの社も「ウチは働き方改革をしていますよ」とアピールに必死です。

中堅:記者の追及が政治家に向かわず、他社の記者へ向かうようになっています。官邸や党の幹部の記者会見で、何度も追及する記者をやり玉に挙げ、ネットに記事を流す社もある。記者が記者を監視するような雰囲気で嫌な時代ですね。

若手:そういう意味では官邸がもくろむ「メディアの分断」は成功している。政権寄りか、そうでないかという立ち位置で、記者が分断されている。

●取材者側にも問題あり

中堅:だから、「官僚が資料を出さない」「幹部が質問に正面から答えない」という事態には、記者クラブが一丸となって批判しなければいけないのに、一致団結できない。為政者は記者側から激しい批判が起こらないから、またいいかげんな回答を繰り返す悪循環が生まれてしまっている。

若手:取材をやりにくくしているのは、官邸の圧力だけでなく、取材者側の問題もあることは間違いないですね。

(構成/編集部・作田裕史)

AERA 2017年6月26日号

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