官僚も自民党議員も官邸にビビりながら記者と会っている。ある党幹部は官房長官から「お前が外で誰に何を言っているのかはわかっているぞ」と言われたと聞きました。冗談めかした口調だったようですが、発言を萎縮させる効果は絶大です。

●夜回りでネタ取れない

──そうした緊張感の中、国会議員とどう接触していますか。

ベテラン:そもそも、衆院の議員宿舎が赤坂宿舎に一本化されてからは、夜回りで情報を得にくくなった。誰と会っているのかが一目瞭然になってしまうので、宿舎で記者が政治家と接触しにくくなってしまった。

若手:だから若い記者はメールやLINEでやりとりをすることも多い。ただ、情報管理の面から見ると、危ない部分もある。特にネタのやりとりをメールでするのは控えたほうがいいが、夜回りで情報が取りにくいので、それを禁止するのも難しい。

ベテラン:政治の特ダネで視聴率が上がることはまずない。だから、日々のニュースで毎日少しでも新しいネタを入れていかなければならないという意識は薄れている。それよりも、テレビは「今日も国会が紛糾した」という政治の“状態”を繰り返し伝えることのほうが大事。夜回り取材は相対的に重要度が下がっています。

●秘書官が質問を止める

ネット中堅:ウェブメディアでも政治関連記事のアクセスは少なく、全体の2%くらい。ただ、炎上しやすいのも政治記事。だから、上層部から「アベノミクスを批判するような記事は掲載するな」というお達しが来るようになった。

中堅:首相のぶら下がり会見もなくなった。実質的には旧民主党の野田政権のときに廃止になったが、それでも2、3カ月に1回はグループインタビューとして記者たちの直接取材に応じていた。今は、官邸に入ってくる総理への声掛けすら控えるような雰囲気になっている。

ベテラン:外遊や被災地訪問などの前には、持ち回りで民放とNHKからの代表質問には答えるけど、形式的なものです。

中堅:幹事社からの代表質問が1問だけ。周りには新聞記者もいるけど、基本的に幹事社の質問以外は受け付けない。たとえば、サミットに行く前に加計学園問題のことを質問したくても、何も聞けない。代表質問の後に二の矢を飛ばそうとすれば、秘書官が止めに入って強制的に終わってしまう。

──各メディアで政治の報じ方が変わった点はありますか。

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