「猫の館ME」の小倉さんは、保護猫活動の社会的認知度を高めたいと株式会社として運営している(撮影/岡田晃奈)
「猫の館ME」の小倉さんは、保護猫活動の社会的認知度を高めたいと株式会社として運営している(撮影/岡田晃奈)
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 犬は「フレンドリー」だけど、は「ツンデレ」。猫好きにはたまらないその魅力が変わるかもしれない。人工増殖と給餌が野生を奪い、「犬っぽい猫」が増えているのだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。猫ブームの勢いが止まらない中、ペットの世界に何が起きているのか。AERA 2017年6月19日号では、ペットを大特集。

 猫を初めて飼う人には、子猫よりも成猫の方が良いらしい。その理由とは?

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「ジルもモカも1歳前後でやってきました。かわいくて、猫のいない生活は考えられません」

 そう話すのは千葉県市川市の田所豊さんと理恵さん夫妻。愛犬を亡くし、悲しみが続いていた頃、庭に遊びに来る地域猫になぐさめられた。

 次にペットを飼うなら保護猫を、と考えた矢先、メスのジルちゃんに出合った。体形は成猫に近かったが、行動はほぼ子猫。その後、モカ君も家族になった。ジルちゃんはおとなしく、モカ君はやんちゃで甘えん坊だ。

「3歳くらいまで、行動は子猫と変わらないそうですよ」と、犬派だった2人はすっかり猫のとりこだ。

「初めて飼う人こそ、大人の猫さんも考えてほしい」と話すのは、千葉県浦安市で保護猫カフェ「猫の館ME」を運営するキャットシッターの小倉則子さんだ。譲渡先を見つけにくい成猫に悩む保護親を助けたいとカフェを開いた。

「子猫は1歳くらいまでは病気や事故、いたずらが心配です。でも、成猫は性格も健康も安定していますし、飼い主さんとの相性もよく分かるんです」(小倉さん)

●いい譲渡先を探したい

 じつは田所さん夫妻のモカ君も小倉さん経由で譲渡された猫。

「成猫でも、なつきます。子猫の時期は一瞬で、成猫からが本当の猫との暮らし。とくに働いている方には、人間の生活に溶け込みやすい大人の猫さんがおすすめなんですよ」(同)

 保護猫活動では、病気を持つ猫の課題もある。猫の感染症は基本的に人には移らない。キャリア猫も安心できる環境なら長生きできる。保護活動を通じて、よく知っているからこそ、いい譲渡先を探したい。その一心で、専用シェルターまで作ったのが、盛岡市のNPO法人「もりねこ」の工藤幸枝さんだ。工藤さんも猫好きが高じて保護猫カフェを運営するなかで、キャリア猫の問題に直面した。

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