ここで不思議なのは、安倍首相がお得意のリーダーシップを発揮していないことだ。
「共謀罪」では、条約加盟に法改正が欠かせない、五輪のために必要と首相は説明したが、受動喫煙対策も同じはず。党総裁でもある首相はなぜ傍観するのか。ある自民党議員は「安倍首相の忖度では」と推測する。
我が世の春の首相が忖度する相手などいるのか。答えは「財務省」。この議員などによると「首相は森友学園で財務省に大きな借りがある」という。つまり森友問題で“悪役”を一手に引き受けた財務省は、昭恵夫人もろとも窮地に立った安倍夫妻を救った。首相は消費増税で財務省とそりが合わなかったが、今回の一件で財務省が「頼りになる」と気づいたというのだ。
加えて喫煙規制で打撃を受けるのは、財務省の直轄地の日本たばこ産業(JT)。実は歴代社長は旧大蔵省の天下り。最近3代こそ生え抜きが社長だが、会長として君臨するのは元財務省次官の丹呉泰健氏だ。たばこ議連の後ろ盾はJT・財務省連合、表の顔が野田会長というわけだ。
放置される受動喫煙対策の敗者は塩崎厚労相だけではない。国民の8割は非喫煙者だ。ある自民党関係者はこう予想する。
「法案ができる前に、大臣のクビのすげ替えがあるのかも」
(ジャーナリスト・山田厚史)
※AERA 2017年6月19日号