苦しんだがゆえか、自分自身に明らかな変化もありました(※写真はイメージ)
苦しんだがゆえか、自分自身に明らかな変化もありました(※写真はイメージ)
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 独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。

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 ブンデスリーガ2年目のシーズンが終わりました。

 けがからの復帰に時間を費やしたこともあり、自分が思い描いたような1年を送ることはできませんでした。相手と戦う以前に、自分たちのチームの立て直しに明け暮れたシーズンだったようにも思います。

 連敗続きの時期には、どこからともなく「誰それが悪い、監督のせい」というような声が上がり始め、チームがバラバラになっていくのを目の当たりにしました。それはマインツらしくない、二度と味わいたくない苦い経験でした。ただ、その中でも1部残留という目標に向かい、もう一度、チームがひとつになれたことは大きな成果です。もがきながらも残留を成し遂げ、何物にも代えがたい達成感を得ることもできました。

 苦しんだがゆえか、自分自身に明らかな変化もありました。

 体づくりを徹底し、トレーニング方法や日々の生活、食事にいたるまで細部にこだわって見つめ直せたことは、そのひとつ。ピッチではより賢くプレーすることを含め、献身性やタフさが身につき、心身両面で「強く」なれたようにも感じます。それらを数値で測ることはできませんが、着実な積み上げを実感し、希望をもってシーズンを終えることができました。

 ただし、FWが評価されるのは、「ゴールという数字しかない」という思いも強くしています。

 ブンデスリーガで日本人通算200得点目をマークしたことや、フランクフルト戦で決勝点を挙げ、「チームを救うヒーロー」と称されたことは、自信につながっています。また「19試合出場・5得点は悪くはない」と言われることもありますが、「それでも、まだまだ物足りない」──。それは今、僕自身が一番に感じていることです。

 マインツは来シーズンに向けて監督が代わり、チームを離れる選手も発表されつつあります。再び一からのスタートとなりますが、このかけがえのない経験を無駄にすることなく、大暴れをして「今度は数字を積み上げたい」と、心はすでに来シーズンに向かっています。

(構成/藤原夕)

武藤嘉紀(むとう・よしのり)
1992年7月生まれ。東京都世田谷区出身。慶應義塾大学経済学部卒業。大学在籍時からFC東京でプレー。2014年にはJリーグで13得点、日本代表に選ばれた。翌15年、Jリーグファーストステージで10得点と活躍し、これを置き土産にドイツ・マインツへと移籍。1年目はリーグ7得点を挙げた。

AERA 2017年6月5日号