「10回以上突き返され、半泣きで書き直し、やっと掲載されました。でも、外部できちんと評価されたことで生徒は大きく成長しました」

●「失敗できるのが強み」

 同校では全員、3年次に卒業論文を書くが、その題材にサイエンスクラブでの研究を選ぶ生徒も多い。放課後の活動をのぞいてみると、何やら不思議な筒状の物体が……。これは宇宙素粒子の検出器で、ノーベル賞で有名になった「スーパーカミオカンデ」の簡易版。アメリカの団体からの無償貸与で、世界中にある同じ検出器と連携してデータを集め、共同研究を行っているという。

「先日はアメリカの専門家に講義をしてもらいましたが、生徒にはすごく刺激的だったようで、英語で3~4時間あったのに、集中して聞いていましたね」

 そう語る大塚未来教諭自身も、最近までスイスで研究活動をしていた素粒子物理学のエキスパートだ。大塚教諭によれば、一般の高校では受験勉強で時間的余裕がないため、実験も失敗が少なくすぐに結果が出るものを選びがち。その点、同校は大学付属で受験がないため、難しい実験にチャレンジし、「たくさん失敗ができるのが強み」だという。

「何度も挫折すると、わからないことが当たり前なんだと体感します。それを繰り返すうちに、解けなくてもチャレンジするという粘り強さが身につきます」

 同校がSSHで、大学受験がないことが気に入って入学したという3年生の原田慧さんも、

「もしかしたらテストの点数では大学受験を経験する人たちにかなわないかもしれないけど、ここでは本当に自分がやりたいことを突き詰められるのがいい」

 と話す。

「ここまでいろいろ有名なプレゼンを見てきたけど、いいプレゼンの共通点って何かな」

 取材当日、1年生が取り組んでいたのは前出の半田教諭による「情報」の授業。この科目では、卒論制作に向けて論文の書き方やデータ分析の仕方、プレゼンスキルなどを学ぶ。半田教諭によれば「狙いは卒論だけではない」。授業を熱心に受けていた大野成音さんに感想を問うと、こんな答えが返ってきた。

「社会人になればいろんなプロジェクトに関わりますよね。プレゼンは自分の考えを伝える重要な手段。将来、絶対役に立つ」

 教諭の思いは伝わっているようだ。(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年6月5日号

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