AIと協働することになるいまの子どもたちが追求するべき、「人間にしかできない仕事」とは一体どういうものなのか。

 前出の上田さんによれば、AIは知識を整理することはできても、新たな抽象概念を創出することは難しい。顧客の表情などを読み取って対応を変えるような高度なコミュニケーションや、不測の事態に対処するといった「非定型」の仕事も苦手。ロボットのみで完結できるホテルを目指し、長崎県のハウステンボスや千葉・舞浜の「変なホテル」で実証実験を続けるエイチ・アイ・エス(HIS)広報によると、同ホテルではフロント業務や経理は不要になった一方、細やかな清掃など顧客に「心地よさ」を提供する部分などは、人の手で行う必要があることが分かったという。

「イベントの企画などクリエイティブな業務も人間が担っていくでしょう」(同社広報)

 ビジョンを描いたり、AIを使って解くべき課題を見つけることも、人間にしかできない。

 AI時代は、仕事の中身だけでなく、働き方も変わっていく。

「今の親はいい大学を出て大企業で総合職オフィスワーカーとして働くのが勝ち組とされてた世代。でもAIによる自動化が最も進むのはオフィスの中。子どもたちが社会に出る頃、従来の勝ちパターンはなくなっているでしょう」(上田さん)

 会社で「総合職」として働くのは、意思決定にかかわる限られた人間。その他多くは各分野のエキスパートとして、プロジェクトごとに会社やチームを変えながら仕事をしていくことになる。そういう時代を見据えると、学校選びの基準も変わってくる。

 今回アエラでは、AI時代を生き抜く子どもを育てる学校という観点で、期待できそうな中高一貫校や高校を独自に探した。中高に注目したのは、そこの教育を変えることが、いま一番必要だからだ。前出の山内教授によれば、日本の小学校は意外にも昔から、今でいうアクティブラーニング(AL)型の授業を実践しており、国際的にも評価が高い。大学でもいまALが広がる。ところが、中高だけはこの流れに取り残されているという。

「その6年が、座学中心の『お勉強』で止まっている。ディスカッションの経験がなさすぎて、大学に入っていざ授業で議論をしようとしても、日本の学生は単語しか出てこない。海外の学生には全く太刀打ちできないのが現状」(山内教授)

(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年6月5日号