Aさんが登録したのは、第二新卒・既卒に特化して転職サポートを行うベンチャーのUZUZ。他にもAさんのような今年の新卒退職者たちが登録し始めているという。同社専務取締役の川畑翔太郎さん(30)は、これまで1千人以上ものキャリアカウンセリングを行ってきた。Aさんの事例は新卒がすぐ辞めてしまう典型的なパターンと見る。
「就活を雑にやってしまったのかもしれません。サービスを提供する側になることを考えず、『旅行が好きだから』と利用する側の視点のまま決めてしまった。楽しく便利に旅行ができるのは、長時間空港で働く人たちがいるからです。業界の利益構造や拘束時間の長さ、離職者の多さなどの実態も情報収集すれば事前にわかったはず」
川畑さんによれば、退社理由で最も多いのは「人間関係」だが、よくよく聞いてみると、お客様感覚で入社し「上司が何も教えてくれない」という待ちの姿勢でいることがうまくいかない原因の場合も多いという。
UZUZでは、失敗の原因を20時間を超える面談の中で振り返りながら、内定だけでなく「入社後に定着し活躍できること」を見据えてサポートする。結果、入社1年後の定着率は90%を超える。
「一度失敗しているから本人には危機感があり、仕事に対する本気度も高い。紹介した企業からも、満足してもらえるケースが多いです」(川畑さん)
●娘が「働いてあげる」
再チャレンジ可能で売り手市場の今、転職のハードルはさほど高くはない。就職条件も良くなっている。そんな中、若手の転職活動で目立つのが「面接無断欠席」「メールの既読スルー」など、一般常識やマナーの欠落だ。
営業代行サービスのエクスピーズ代表取締役・奥田邦博さん(44)は、お金と時間をかけて面接日を設けても9割の面接者が来ないと嘆く。中途採用の場合、勤務日ではない土日に面接日を設定し休日出勤するが空振りする日々だ。怒りを通り越して、あきれるばかり。土日に出社する際、「パパ、きょうも(面接者は)来ないと思うよ」と小2の娘に言われる。その予想通り、面接者は現れず肩を落として帰ると、「もう(面接)しなくていい! 私が働いてあげる!」と声をかけてくれたことも。娘が学校で考えた年間目標は、父親を見てだろう、「約束を守ること、時間を守ること」だった。