2020年の東京五輪に向けて、新卒採用だけでなく、40代以上も含めた転職市場が活況だ。気になるのは転職後の年収のアップダウンだが、自己実現を優先しようと地方に移る人、お金に価値を置かない転職も増えている。AERA 5月22日号では「転職のリアル」を大特集。転職をまじめに考えている人、うっすら意識している人にも読んで欲しい。
慢性的人材不足で追い風が吹く既卒・第二新卒市場。失敗を糧に、再チャレンジが可能になっている。同時に売り手市場ならではの“大迷惑”に振り回される企業も──。
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地方の大学を卒業、就職のため上京してきたAさん(23)は、この4月に新卒で入社した企業を1週間で辞めた。就活で50社ほど受けた末に入社した、空港の保安業務を行う企業だった。内定後の研修でうっすら「ブラックでは」という予感はあった。先輩たちは愚痴ばかり。シフトの拘束時間も長い。さらに労働契約書を手にして驚いた。就活サイトには基本給18万円プラス手当とあったはずなのに、基本給は15万円だった。新人の立場で「話が違う」と訴える勇気もなく、それなら自分から身を引こうと決めたという。
「過労死のニュースなどを見るたび、辞めてよかったなと思います。自分の身は自分で守らないと」
と、すでに転職活動に気持ちを切り替えている。
兵庫県在住のBさん(25)は、関西の有名私立大学を卒業後に入社した会社を約1年半で退職した。理由は、休日返上さながらの長時間労働と、上司と相性が合わなかったことだ。
「社員が次々と過労で倒れていくのを目の当たりにして、一生働けると思えなかった」
転職活動を始めてすぐに内定をもらった。
「今の会社は定年まで勤めたい。前職を経験してなければ今の会社のありがたみもわからなかったと思います」
●お客様感覚の雑な就活
ブラック企業から逃れ、転職市場に流れつく若者たち。
だが、新卒ブランドを失っても、セカンドチャンスをつかむ人は多い。従来は「就職できなかった人」「3年続かなかった人」と見られ難航した既卒・第二新卒の就活だが、慢性的な人材不足の流れで採用が増えているのだ。特に中小企業は新卒だけに絞ってはエントリーが足りないのが現状だ。