「空前の売り手市場でなかなか若手を採用できない。教育コストがかからず、企業文化にもなじみがあってマッチングを図りやすい元社員の再雇用という選択肢が浮上してきたようです」

●求めたのは夢だった

「出戻った」人たちは、幸せに働いているのだろうか?

 07年から再雇用制度を導入している森永乳業では、30~50代の7人が制度を利用して再入社。当初は出産などの理由に限定していたが、08年に自己都合退職にも間口を広げた。

「他社で働いている元社員から『話を聞かせて』と、よく問い合わせを受けるんです」

 晴れやかな表情でそう語るのは、16年に制度を利用して再入社した片野笑さん(36)。03年に新卒で同社に入社し、新卒採用や新商品のマーケティングなどを担当した。なかでも、内定者の相談に乗るなど人の悩みを解決できる人財部の仕事にはやりがいを感じていた。

「もっと人のお世話ができる仕事をしたい」という気持ちが強くなり、入社4年目の26歳でホテル業界に飛び込む決意をする。

「未経験でしたし、体力勝負な仕事なので『若いうちに転職しなきゃ』という焦りがありました。当時は夢があるだけで、不安はなかったです」

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