シアトルは本当に不便で、空港からダウンタウンへのライトレールも30年以上住民の反対運動を経て、やっと造られました。空港からの足が車しかなかったのに人口は増え続けたのですよ。交通機関が整えば人が来ると思っている日本の県知事たちは少しはシアトルに学ぶべきでしょう。
シアトルがやったことは、まず住民同士がタイトなコミュニティーをつくり、教育水準を上げ、高い医療水準を維持するという目標を掲げたこと。そのために税金を払い、自ら活動に参加し責任をもって実行し、自分たちが住みたいと思う街をつくりました。その結果、全米から教育、医療水準の高いシアトルに住みたいという人が集まり、不動産価格も上がりました。まさにエリアの価値を上げることで街の発展につなげた現実があるのです。
自分たちは不動産を所有しているので生活に困らないし、子どもたちはみんな東京で働いてくれればいい、と考えている日本の地方の既得権者とは正反対のことがシアトルでは起きている。なぜ、日本では起きないのか、と言えばそれは黙っていてもいくらでも補助金が来るからで、要するに政府は干渉せず放っておけばいい。
大体自分が住んでいるエリアにどうして責任を持つ気がないのか? 当たり前ですが、そんな大人たちがやる気もなく、魅力のない街に若者が残るはずもないのです。
※AERA 2017年5月15日号