いい言葉を聞いたことがない。「少子高齢化」「福祉の縮小」「年金消滅」……。私たちの老後は本当に真っ暗なのか。このまま、ひたすら下流老人化を恐れる人生でいいのか。どこかに突破口はあるはずだ。「年を取るのは怖いですか?」――AERA5月15日号は老後の不安に向き合う現場を総力取材。話題の昼ドラマ「やすらぎの郷」プロデューサーに、なぜ高齢者向けドラマを作成することになったのか、その裏側を聞いた。
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<舞台はテレビ界に貢献した者だけが入れる無料の老人ホーム。でもテレビ局員は入れない。テレビをダメにした張本人だから>
4月からテレビ朝日系で始まったドラマ「やすらぎの郷」(月~金曜、昼0時30分)の準備を始めたのは2015年夏。最初に渡された企画書の1ページ目にこう書かれていました。82歳である倉本聰先生の僕たちテレビ屋に対する痛烈なメッセージです。
高齢になると朝早く目が覚めるが、テレビをつけると情報番組ばかり。同じ内容が繰り返され、老人が見たい番組がない。「それならば自分が書くか」と先生が筆をとられたのがこの企画の始まりです。あれだけの人気女優だった、大原麗子さんが孤独死した、その有り様への怒りも引き金のひとつになったようです。
とはいえ「やすらぎの郷」はけっして辛気くさい老人ドラマではなく、石坂浩二さん演じる脚本家の主人公がさまざまな騒動に巻き込まれ、やすらげない“コメディー”。仕事への執着や家族の問題、遺産相続など中高年が直面する身近なテーマに加え、恋愛なども入ってくる。
チャプリンの言葉を引用して、先生はこう言っています。「人生は、クローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である」。高齢者に限らず、若者など幅広い層が楽しめるドラマを目指し、青春ドラマのつもりで作っています。
俳優さんたちの平均年齢は78歳。その中では、キャリア30年の僕もまだまだはなたれ小僧。出演者の方々のエネルギーに日々圧倒されています。
(構成/編集部・石田かおる)
※AERA 2017年5月15日号