福島県沿岸部の富岡町の出身。震災の時は、小学5年生。自宅は無事だったが、東京電力福島第一原発から20キロ圏内にある町は、原発から出た放射能に襲われた。震災の翌日、坂本さんは家族6人で着の身着のまま、町の避難所となった郡山市に避難した。市内を転々と移りながらゼロからスタート。そうした中、生活の基盤を築いてくれたのは両親だった。今こうして学校に通えるのも、合唱団に入って大好きな歌を歌えるのも、すべて両親のお陰だ。

「私より大変だったのは両親だったと思います」

 その親への感謝の思いを、歌に込めた。

「ステージの後、お母さんが『よかったよ!』と言ってくれたので、気持ちは伝わったと思います(笑)」

●歌詞で親しみやすさを

 今年の音楽祭のハイライトは、フィナーレに全員で歌った「ひまわり」だ。葉加瀬さんの代表曲の一つ「ひまわり」に歌詞をつけたもので、この日が初披露。もともと「ひまわり」は、震災時のNHK連続テレビ小説「てっぱん」のテーマ曲。歌詞がなかったこの曲に歌詞をつけようと思い立った理由を、葉加瀬さんはこう語った。

「歌にすればより親しみや深さが増し、もっと多くの人と共有できる」

 歌詞のアイデアは福島、宮城、岩手3県の子どもたちから募集した。集まった歌詞は45件。

●大好きな街が壊れたら

 太陽を向いて咲く黄色い花に、子どもたちはどんな思いを込めたのか。

 詞を応募した、安藤里彩(りさ)さん(18)は言う。

「もし私が、昔からこの街に住んでいて、その街が突然なくなったらどんな気持ちになるだろうと、想像しながら書きました」

 震災直後からの3年間、岩手県沿岸部の宮古市で過ごした。地震と津波で壊れた街。この世のものとは思えない光景が広がっていた。しかし、そこにはなじみの店や、友だちと待ち合わせた場所があったはず。そんな大好きだった街が壊れてしまったら……。そう考えると、どんどんイメージが膨らんだ。

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