「トレゴスナン」では2005年から国産紅茶を販売している。コーンウォールの温暖な気候も栽培を成功させた要因だ(撮影/富岡秀次)
「トレゴスナン」では2005年から国産紅茶を販売している。コーンウォールの温暖な気候も栽培を成功させた要因だ(撮影/富岡秀次)
この記事の写真をすべて見る
寝台車「ナイト・リヴィエラ」はロンドンのパディントン駅から出発する。詳しくは、GWR(Great Western Railway) https://www.gwr.com/まで(撮影/富岡秀次)
寝台車「ナイト・リヴィエラ」はロンドンのパディントン駅から出発する。詳しくは、GWR(Great Western Railway) https://www.gwr.com/まで(撮影/富岡秀次)
イギリスへの旅は、ブリティッシュ・エアウェイズが便利。(提供写真/ブリティッシュ・エアウェイズ)
イギリスへの旅は、ブリティッシュ・エアウェイズが便利。(提供写真/ブリティッシュ・エアウェイズ)
旅行者向けのビジター・オイスター・カードは英国政府観光庁のオンラインショップで購入できる。詳しくは、英国政府観光庁(https://www.visitbritain.com/jp/ja/onrainsiyotupu)まで(撮影/高橋有紀)
旅行者向けのビジター・オイスター・カードは英国政府観光庁のオンラインショップで購入できる。詳しくは、英国政府観光庁(https://www.visitbritain.com/jp/ja/onrainsiyotupu)まで(撮影/高橋有紀)
コーンウォール半島の先端、ペンザンスから眺める海。ペンザンスはコーンウォール語で「聖なる岬」の意味だという。詳しくは、Visit Cornwall https://www.visitcornwall.com/まで(撮影/富岡秀次)
コーンウォール半島の先端、ペンザンスから眺める海。ペンザンスはコーンウォール語で「聖なる岬」の意味だという。詳しくは、Visit Cornwall https://www.visitcornwall.com/まで(撮影/富岡秀次)

 イギリスはまずい、は過去の話だ。極上の食材を育む自然、情熱的な生産者、賢明な選択のできる消費者。ブレグジットに揺れる中、違ったイギリスが見えてくる。2回目はいよいよ、南西部・コーンウォールへと向かう。

【おいしいイギリスの写真はこちら】

*  *  *

 いまイギリスの食文化を積極的にリードしているのが南西部だ。コーンウォール、デヴォンの二つの州は、英語圏で圧倒的なシェアを誇るガイドブック『ロンリープラネット』で、「foodie destination」、つまりグルメスポットとして紹介されている。新鮮な食材の宝庫で、国内のカリスマシェフたちもこぞってこのエリアに出店する。

 はたしてイギリスは本当においしくなったのか。

 疑問を解明するため、ロンドンのパディントン駅から寝台車ナイト・リビエラに乗り込んだ。向かうは終点ペンザンス。イギリスを日本に例えるとしたら、ちょうど鹿児島県にあたるのがコーンウォール州で、デヴォン州は宮崎県と考えていただきたい。ペンザンスはその最西端、鹿児島・枕崎の位置にある街だ。

 寝台車を降り、朝日の中でコーンウォールの風を浴びながら、当地が舞台のひとつとなった浦沢直樹の漫画『MASTERキートン』を思い出す。目の前に広がるのはまるでMASTER キートン実写版のような世界だ。

 主人公の平賀キートン太一はイギリス人の母と日本人の父を持つ考古学者だ。幼少期に母親の出身地コーンウォールで暮らしたという設定のため、荒野、遺跡、そしてメノウ色の海といった風景が漫画ではたびたび描かれる。

 イギリスでもっとも温暖な気候に恵まれ、風光明媚なこのエリア。イギリス版モンサンミッシェルと言われるセント・マイケルズ・マウント、海岸沿いにある野外劇場ミナックシアターなどの観光名所も人気で、リゾート地として国内各地から保養に訪れる人も多い。

 最高の食材を作りあげるのは、決して自然の恵みだけではない。そこにはいつも信念と情熱を持った生産者たちの存在がある。

 イギリスといえば、紅茶の国。しかしほとんどの茶葉はインドやスリランカから輸入されている。イギリス国内で初めて茶葉の栽培に成功したのが「トレゴスナン」のガーデンディレクター、ジョナサン・ジョーンズさんだ。イギリスの紅茶文化の始まりといえば17世紀まで遡るが、初の国産紅茶が発売されたのは2005年とつい最近のことだ。

 コーンウォール州トゥルーロという町にあるトレゴスナンは、約80平方キロメートルの敷地を持つプライベートガーデンだ。世界中のめずらしい樹木や植物が植えられている。200年前から観賞用のカメリア(ツバキ)を栽培しており、それが茶の木の栽培の成功につながった。ジョーンズさんは日本でもお茶の栽培を学んだ経験がある。失敗と試行錯誤を重ねた末、ようやく成功した。

次のページ