別の視点から「WHの買収は最初から失敗が見えていた」と語るのは、世界の原発事情に詳しい環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さんだ。

「1990年代、原発建設はすでに高コストで採算が取れない事業でした。故障と補修を繰り返して巨大化、複雑化した原発の建設費は増加の一途をたどり、工期延長や停止も常態化していた。そんな状況で、10年スパンの原発建設計画が想定通りに進むはずがない」

●世界からカモにされた

 00年代、ブッシュ政権下のアメリカでは原発の再評価、いわゆる「原発ルネサンス」が一世を風靡していたが、

「東芝はその幻想に踊らされ、経済産業省の口車に乗せられた。結果、イギリスからWHという“ババ”をつかまされ、果ては、原子力事業から距離を置き始めたアメリカのCB&IからもS&Wという“負債”を押しつけられた。東芝は世界からカモにされたんです」(飯田さん)

 1970年代から東芝で原子炉の配管や機器設計に従事した男性(78)は「買収自体は正しかった」としながらも、東芝の社風がリスク管理の甘さにつながったのではないかと指摘する。

「他者を信用しすぎる『坊ちゃん』体質が抜け切れない。それが東芝のよいところでもあったが、今回は高い代償を支払うこととなった。結果的には経営陣がなめられていたのだろう」

 3月29日に開かれた記者会見。WH買収について問われた綱川智社長は、「結果から振り返ると問題な判断だった」と発言。同社の管理体制についても「ガバナンス、意思疎通、経営に関する全般的なこと。そういうことを中心に問題があった」と述べた。

 今後の原子力事業については、「燃料サービスや廃炉など社会的な責任もあるので、国内の原子力事業は進めていく」と、既存原発のメンテナンスや廃炉関連事業で収益を確保する路線へのシフトを示唆した。

 国内原子力事業では2016年度1500億円、19年度2千億円の売上高を見込む。

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