プロ野球・読売巨人軍の村田修一選手(36)は書籍『がんばれ!!小さき生命たちよ』の中で、早産で生まれ、同センターのNICUに入院した長男・閏哉さんについてこう書いている。
「早産で生まれたからには、普通の出産で生まれた子どもとは成長の仕方もまったく同じというわけにはいかないだろう。(略)でも、これまで何度も大きな手術などを乗り越えてきた閏哉の強さを思い起こせば、ほかの子と比べる必要はないし、人の目を気にする必要もない」
●赤ちゃんの頑張りをお兄ちゃんにも見てもらう
同センターでは3年前からきょうだい面会や父親も過ごしやすいNICUづくりに取り組み始め、年間入院数が340から2割以上増加した。入院期間が短縮されたためだ。もちろん病院側が無理に退院を促すのではなく、これまで受け入れの覚悟ができずに退院を先に延ばしがちだった家族側が、「早く家族一緒に暮らしたい」という気持ちになれたからだと考えられるという。
15年秋に451グラムで生まれた大城朔太郎君は、4カ月余り同センターのNICUに入院した。父・和洋さん(38)と母・麻耶子さん(37)は振り返る。
「きょうだい面会ができたから2歳上の想助にも、朔太郎が頑張っている姿を見せられてよかったし、家族全員であの場にいられたことで家族のつながりが強くなったと思います」
また、NICU退院児への支援は少なく、子どもの発達の相談や悩みを共有する場所もほとんどない。適切な情報にたどり着かず、必要な療育を適切な時期に受けられないケースもある。
そこで同センターでは、退院後のフォローアップ外来にも力を入れる。妊娠中に母児間輸血症候群が判明し、出産後に直之君(3)が同センターに運ばれた追川かおりさん(40)は「発達が遅れていて不安だったけど、外来で相談できるから心強い」と言う。
同センターではさらに、早産児の育児を応援するホームページを準備中だ。担当する野口聡子医師(38)は言う。
「病気や障害があっても、どう対応すればいいか、誰の力を借りればいいかがわかっていれば家族の笑顔が増えるのではと考えています。笑顔の多い家族の中で育つことは、お子さんの発達の促進にもつながり、さらに家族の幸せにつながります。その好循環の一助になるようなホームページにしたい」
医療を尽くしても救えない命もある。同センターでは、限りある命を家族で過ごす時間も大切にしている。