3年目を過ぎ、さらに体調が悪化。悔しかったが、もう体が言うことをきかない。退職を決め、かわいがっていた園児にも別れを告げた。現在は、奨学金の返還猶予を申請し、治療をしつつアルバイトで働いている。

 奨学金が、ブラックな職場にも留まり続けてしまう、負の原動力になる。同じ力学が、性風俗産業で働く女性にも働いている。

 風俗で働く女性のセカンドキャリアを支援する一般社団法人「Grow As Peopile」が15年に風俗で働く女性377人を対象にした調査によると、働き始めた動機を「学費や奨学金返還」と答えたのは52人と10%を超えた。風俗の平均月収は約40万円。月に数日働けば、奨学金返還の悩みは解消される。

 一方、代表理事の角間惇一郎さんはこう明かす。 

「学生時代、風俗で働いていた人は『就職すれば辞められる』という人も多いのですが、奨学金の支払いがあることで、完全に辞められないケースもあります」

 風俗は店舗型が2割に対し、8割は無店舗型(デリヘル)。デリヘルは、一度登録すれば好きな時に働けるので、一定期間働かなくなっても、再び戻って働く人も少なくないという。

●突然仕送りがストップ

 一方、奨学金を借りる人には、増加傾向にあるひとり親家庭で育つ人も少なくない。経済的に不安定な状態の学生は、親の都合に振り回されやすくなる。

 両親が小学生のころに離婚し、母子家庭で育った田中英子さん(仮名、21)。母は非正規で働き、収入が安定しない。大学の学費は、離れて暮らす父が負担してくれる約束だった。交通費や教材費などに充てるため、第一種奨学金を申請。無利子で月約5万円の貸与が認められた。

「奨学金を借りることは、既定路線という感じ。ほかに選択肢なんてありませんでした」

 当初は、交通費や携帯代などに使うだけで、奨学金のほとんどは貯めたままにしていた。ところが、1年生の秋ごろ、突如父からの振り込みが途絶えた。貯金額はこの先の学費を支払い続けるには到底足りない。

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