●2人に1人が奨学金

「僕、返せない額だとは思ってないですよ。開き直らないと、仕方ないじゃないですか」

 明るくふるまう吉川さんだが、周囲の「大人」から、こんな言葉をかけられたことがある。

「暇があるなら、さっさと働けばいいのに」

「ちゃらちゃら遊んでるんじゃないぞ」

 かつての大学生のイメージを押し付けられるのには違和感があるが、どうせ理解してもらえない。孤独感がいつも胸にくすぶる。

 大学進学という自由を手にするための切符である奨学金。そのプラチナチケットの代償は、若者の肩にずしりとのしかかる。今や学生の2人に1人が奨学金を利用している。最も利用者数が多いのが、日本学生支援機構の貸与型奨学金だ。無利子の第一種と有利子の第二種があり、第一種には成績などの要件が課される。

 なぜ奨学金を借りる人が増えているのか。背景には学費の増加と親の収入減がある。

 2015年度の授業料は、私立大学の平均では、86万4400円。国立大学で53万5800円と、30年前と比べると、国立、私立共に2倍近く上がっている。

 これに反比例するように下降傾向にあるのが、1世帯当たりの平均所得だ。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、14年の1世帯当たりの平均所得は541.9万円。1994年の664.2万円から100万円以上も下がっている。

 親の収入減は、もろに学生の懐にはね返る。仕送り額の推移をみると、「月10万円以上」は98年には6割以上だったのが、15年には半分の3割に。「仕送り0円」も増加している。

●夢の仕事に就いたのに

 親も、そして大学も、学生が「将来性」を担保に借金を背負い、大学に通うことを当てにしている。ただ、未来永劫、健康で働き続けられるという保証はない。

「今は返還を猶予してもらっていますが、病気がいつ治るかわからないので……。時々、私、死ぬまで払い続けなきゃいけないんじゃないかって不安になります」

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