このままでは、大学に通えなくなる──。急遽、有利子の第二種の併用を申請。月10万円を追加で受け取ることになった。
なぜ急に振り込まれなくなってしまったのか。はっきりとした理由は今もよくわからない。
「父のことは、家族の中でタブーみたいになっていて……母や兄にも相談できる雰囲気ではありませんでした」
結局、半年後に突然、父から振り込みがあった。親の事情に振り回され、ばかばかしい思いもあったが、
「子どもとしては、親の都合に対応していくしかないですよね」
諦めたように、そうつぶやく。
もちろん、奨学金により大学や大学院に通うことができ、夢をつかむことができたと語る人も少なくない。
「今、『返せない』とか、とやかく言う人の声が大きいじゃないですか。僕はお金を借りておいて、返せないというのは通らない話だと思うんです」
そう憤る鈴原修二さん(仮名、38)は、ロースクールに通うため、総額800万円の奨学金を借り、昨年無事に司法試験に合格した。
●「借金と知らなかった」
司法試験に合格するまでの浪人期間、返還猶予の申請が通り、弁護士になる夢をかなえることができたという。
確かに、延滞者の中には、奨学金が借金であることを十分に理解しないまま、身の丈に合わない額を借りてしまう人もいる。
日本学生支援機構の調査(14年度)によると、3カ月以上の延滞者は約17万人に上る。「返還義務をいつ知ったか」という問いに対し、「申し込み手続き前」と答えた割合が、無延滞者は9割だったのに対し、延滞者はわずか5割。延滞者の1割近くは「延滞督促を受けてから」と答えていた。
延滞をめぐるトラブルも後を絶たない。旧・日本育英会の奨学金は、04年に独立行政法人である日本学生支援機構に移管。独立行政法人は、厳しくその収支状況がチェックされる。
このため、一定期間延滞した場合、債権回収業者に回収業務が委託されるなど、従来よりも厳しい「取り立て」制度に変更された。