「フランスがイスラム教の国ではないということもありますが、普通に自由に暮らしています」
こう話すのはフランス在住の小仲律子さん(48)。15年前に結婚した大学教授の夫は、フランス国籍を持つアルジェリア人(59)でムスリム。13歳と12歳の子どもがいる。
ムスリムの男性は、一神教徒(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教)としか結婚できない。小仲さんは「彼がイスラム教だし」と軽い気持ちでイスラム教を選択した。
「豚肉は食べませんが、彼がお祈りや断食をしているのは見たことがありません。断食をするムスリムも『その後のパーティーが楽しいから』と言う人もいる。日本人にとっての初詣程度の信仰心」(小仲さん)
現代のフランスで生活する多くのムスリムは伝統への密着度が薄れ、お祈りや断食をしていなくても批判されない。ヒジャブ(スカーフのようなもの)で頭を覆っていない女性も珍しくない。ワインソムリエの資格を持つ小仲さんは、ワインもたしなむ。
「『大変でしょ』とよく聞かれますけど、そう感じたことはありませんね」(小仲さん)
●専業主婦概念ない夫
ミユキさん(仮名・45)はキャリアアップのために20代でアメリカ留学。27歳の時、1年間友人関係だったアメリカ人から「結婚を前提に付き合ってほしい。ただし、あなたの人生の邪魔になるならすぱっと切ってくれて構わない」と言われ、結婚を意識するようになった。4年付き合い、ミユキさんが日本に帰国するのに合わせて日本で結婚。彼は、アメリカの保険会社の日本支社に就職した。
ミユキさんが今でも忘れられない言葉がある。
「健康なのに、どうして家にいるの?」
夫は比較的高収入で、ミユキさんが働かなくても十分にやっていける。仕事くらいしたほうがいいか、程度は思っていたが、なかなか腰を上げずにいた。
一方、アメリカ人の夫には、専業主婦の概念がない。ミユキさんの「だって」という言葉に、夫は「何を言っているの?」と不思議そうな顔をした。