電気グルーヴとしてJ-POPの世界で遊び続けて28年。互いに最強の遊び相手だと認めあうからこそ、自分たちを純化して、音楽の可能性を作品に刻印できる。
4年ぶりのニューアルバム「TROPICAL LOVE」の1曲目のタイトル「人間大統領」にまず驚かされる。「たまたまですよね」と石野は笑った。
「アメリカの大統領選よりずいぶん前に作ってますから(笑)」(瀧)
「伊集院(光)がBSでやってる番組のテーマ曲で、イメージしたのは別の大統領なんですけど。そういう偶然が、結構あるんです。去年僕がソロアルバム出したときも、オリンピックで卓球が盛り上がってたし(笑)」(石野)
電気グルーヴの結成は28年前。二人が静岡県の高校生だった時代に出会ってからは、すでに30年を超える。CMでも使われたヒット曲「Shangri-La」(1997年)からも、今年で20年だ。過ぎた年月の速さのみならず、いまなお遊び続けることをやめない二人の姿勢に驚かされる。
近年のレコーディングでは、曲順を最初に決めて1曲目から作り始めているという。多めに作って後で並べ直すというやり方はしない。最新作もそうだった。合理性を求めてたどり着いた方法論かと思いきや、むしろ逆だった。
「(後で決めるやり方だと)そのレコーディング期間の記録としての作品性が薄まっちゃうし、詰めが甘くなるところもある」(石野)
その発想の行き着く先は、要するに目の前にいる相手と限られた時間でどう遊ぶかが重要だという意味でもある。やりたいことの方向性は決まっているから、遊びの純度を高めることが作品の内容を高める。遊びだけど“お遊び“じゃない。本気で遊ばないやつの相手はしないからこそ、聴く側にとっても密度の濃い作品ができあがる。
「電気グルーヴとしてやることは決まってるんで、曲はすぐできるんですよ。いま作りましょうか?『AERA』の曲。インストですけど(笑)」(石野)
(ライター・松永良平)
※AERA 2017年3月20日号