会社登記を放置している覚えのある経営者は、法務局で確認したほうがいい。谷岡氏と代理人は「係争中」を理由に取材に応じなかった(写真は東京・銀座の「サンウッドビル銀座」)(撮影/編集部・大平誠)
会社登記を放置している覚えのある経営者は、法務局で確認したほうがいい。谷岡氏と代理人は「係争中」を理由に取材に応じなかった(写真は東京・銀座の「サンウッドビル銀座」)(撮影/編集部・大平誠)

 実印も通帳も保管していたのに、知らないうちにビルを転売される──。にわかに信じられない事態が銀座で起きた。主役は、かつてお茶の間を賑わせた元俳優だ。

 東京・銀座8丁目の「サンウッドビル銀座」は約100平方メートルの敷地に立つ地下2階地上6階建ての雑居ビル。「株式会社サンウッド・ツウィンエンタープライズ」(以下サンウッド社)が所有者で、関連企業の「株式会社ロイヤルガーデンリゾート」(同ロイヤル社)が土地建物に極度額1億円の根抵当権を設定していた。

●疎遠だった戸籍上の妻

 この両社の代表取締役に、谷岡弘規氏(68)が突如「選任」されたのが昨年8月7日。両社の取締役が全員任期満了により退任しており、後任に選任されたという株主総会議事録をもとに出された変更登記申請を東京法務局が受理、同10月27日に根抵当設定が解除され、同ビルは渋谷区内の会社に売却された。谷岡氏は1979年2月から1年間、テレビ朝日系列で52話を放送したスーパー戦隊シリーズ「バトルフィーバーJ」のリーダー役を演じ、森繁久彌主演の舞台「屋根の上のヴァイオリン弾き」に出演していた経験もある元俳優だ。

 両社はもともと、ゴルフ場やホテル経営で利益を上げていた「日栄総業」(代表・佐藤英治氏)のグループ会社。日栄総業がバブル崩壊で経営破綻、2005年に破産した後は、古参社員や佐藤氏の親族ら数人で自社ビルのテナント管理などで細々と維持していた。ロイヤル社の取締役は2人、サンウッド社はこの2人にさらに2人を加えた取締役4人体制だった。

 なぜこのビルが狙われたのか。両社の取締役を退任させられてしまっていたN氏が解説する。

「現在83歳になる佐藤氏には10年以上別居している戸籍上の妻がいて、その実の弟が谷岡氏です。佐藤氏も我々もこの姉弟とは長年疎遠でしたが、去年の夏、佐藤氏が自宅で発作を起こして都内の病院に緊急入院した際に妻に連絡が入り、弟の谷岡氏ともども病室を訪れたようです」

次のページ