米カリフォルニア州で2014年、自動で車線変更ができる自動走行の機能について発表するテスラのイーロン・マスク氏 (c)朝日新聞社
米カリフォルニア州で2014年、自動で車線変更ができる自動走行の機能について発表するテスラのイーロン・マスク氏 (c)朝日新聞社
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 若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる。一方で欧米は電気と自動運転にまい進。いまやIT企業や新興勢力の参入も相次ぎ、もうバトルロイヤル状態だ。だが待ってほしい。日本には「技術」だってガラパゴスで元気な市場だってある。AERA 3月6日号「進め!電気自動車」では、そんな熱い人々にフォーカスしてみた。

 急速な発展を遂げている自動車業界。そう遠くない未来には、現在の常識を全て覆す驚きの性能をもった車が誕生しそうだという。

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 16年10月21日、YouTubeで公開された映像が大きな話題を集めた。この年に設立されたばかりの新しい自動車ブランド「LYNK&CO(リンク アンド コ)」によるコンセプト映像だ。テンポのいい音楽に乗って流される約2分の映像の中に、車の宣伝は全くない。代わりに世界各地で暮らす若者が次々と現れ、「常識への挑戦が重要だ。なぜならそれが前進する唯一の道だから」とメッセージを発していく。それだけではない。

「世界中の人々とつながることができる」

「これは技術の話じゃない。人々の話だ」

「簡単にアクセスできることが全てなんです」

 これが車のPRになるのか?

 スウェーデンにある同社広報に聞いてみると、「これまでの自動車とは全く異なる、世界の人々とつながるための『新型グローバルカーブランド』であることを示した」。過去に影響されるのではなく、未来のみを見つめた次世代カーに挑戦するという決意の表明だという。

●新しいカーシェアに

 このLYNK&COは、実は10年にスウェーデンの高級乗用車ブランド「ボルボ」を買収した中国の自動車大手・吉利汽車の新ブランド。研究開発はボルボが拠点とするスウェーデンのイエーテボリで取り組み、元ボルボ関係者やIT業界の技術者らを中心に行われてきた。

 車体は、ボルボが近く発売を予定するプラグインハイブリッド車(PHEV)仕様のコンパクトSUV(スポーツ用多目的車)とほぼ同型で、デザインは極めてシンプル。電気自動車(EV)仕様もほのめかしているが、実は“売り”はそこではない。「スマホ化した車内」だ。

 ダッシュボードには10.1インチのタッチスクリーンがあり、常にインターネットや独自のクラウドとつながっている。スマホさながらに様々なアプリを使うことができ、必要なアップデートもそこでできる。

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