廃炉作業の進捗について、福島第一原発の内田俊志所長は「これまでは汚染水対策など周辺のことを一生懸命やってきた。山を登り始めたところだが、少し先が見えてきた」と話した。福島第一原発では、格納容器内にあるデブリの確認や回収という本丸になかなか切り込めないため、外堀を埋める作業に終始せざるを得なかった。
一方で、写真に写っている堆積物や高い放射線量は、燃料デブリ由来ではないと見る専門家もいる。エネルギー総合工学研究所原子力工学センターの内藤正則副センター長は、「堆積物はアルミの保温材や電線の被覆材が高温で溶けて飛散し、それが鉄製の足場にこびりついたのではないか。高い放射線量も付近の配管内にある放射性物質がこびりついているためと考えられる」と話している。いずれにせよ、直接確認するまでは、デブリがどんな状態になっているのか、誰にもわからない。
●見え隠れする「石棺化」
東電と国は2018年度にデブリ取り出しの方法を決め、21年に1~3号機のいずれかでデブリの取り出しを始める計画だ。こうした廃炉の方針をめぐって昨夏、議論が巻き起こった。
国の認可法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が作成した「技術戦略プラン」で、燃料を取り出さずに覆いで囲う「石棺」に触れた。技術プランは廃炉作業のロードマップの指南書のような位置づけだ。このため自治体や県から、「廃炉断念の布石では」などと疑念や反発の声が上がり、内堀雅雄・福島県知事が経済産業大臣に対して「到底容認できるものではない」などと抗議する事態に至った。
文案では当初、石棺について「原子炉建屋の補強などによる当面の閉じ込め確保に効果があるとしても、長期にわたる安全管理が困難である」などと、否定する文脈で使われていたが、最終的に削除された。
石棺は、86年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故で取られた対応だ。とりあえずの応急措置として、爆発でぼろぼろに壊れた原子炉建屋を、突貫工事でコンクリートで覆った。