●日本でも感じる成熟度

 日本のチョコレート文化の成熟を感じさせるのは、コンビニなどでも気軽に「シングルオリジン」のチョコレートを買えるようになったことだ。

 子どもから大人まで知っている、「♪チョコレートは明治」の明治では、「B to B」のみならず「Farm to Bean」という考えのもと、チョコレート原料になるカカオ豆を収穫、発酵させるカカオ農園やそこで働く人々の生活環境にまで関わっている。

「高品質なカカオ豆を作ってもらうためには、農家を取り巻く環境を改善することが大切という考えから、カカオ農家をサポートする活動をしてきました」(明治・菓子マーケティング部の橘陽介さん)

 明治では、04年に「日本のチョコレート文化の向上」をめざした、「100%チョコレートカフェ」をオープン。カカオや原料へのこだわりをもとに56種類のチョコレートのほか、カカオごとの飲み比べができるショコラドリンクのセットなどを提供している。世界17カ国のシングルビーンが味わえるタブレットは22種類。220円から320円という手頃な価格帯で味わえる。このクオリティーと価格は、さすが「チョコレートは明治」の面目躍如だろう。

 いくら個性があるといっても、1枚だけでは違いがよくわからない。何種類か比較しながら味わうことで、それぞれの特徴がよくわかるのだそうだ。

「100%チョコレートカフェでは、56種類という幅広いチョコレートを扱っているので、スペックにこだわる男性、お酒が好きな男性のお客様の期待にもお応えしていると思います。とくに『3種のテイスティングショコラドリンク』は、シングルビーンごとの特徴をまとめたテイスティングシートを一緒にお出ししているので、男性は、読み込みながら味を楽しんでいらっしゃいます」(同)

 噂のショコラドリンクを試してみた。確かに、味わいが全く違う。ワインや日本酒、ウイスキーのテイスティングが人気だが、チョコレートでも同じような愉しみ方ができる。

 最後にぜひ、紹介したいのが、明治が満を持して発売した「ザ・チョコレート」だ。カカオの産地から厳選した「F to B」により生まれた味わいはもちろん、その形状に至るまで考え抜かれた商品が、なんと、コンビニで買えるのだ。200円台からF to Bのチョコレートが楽しめる──まさに日本のチョコレート文化を変える商品だ。

 古来、カカオは、貴重な薬として、王侯貴族が口にしてきた。最近では、カカオの効能もよく知られるようになった。

 今年のバレンタイン、俺チョコで新しい世界を試してみては。(ライター・矢内裕子)

AERA 2017年2月13日号