こう聞くと、コーヒーやワインを連想しないだろうか。素材であるカカオやブドウの産地、そこから生まれる特徴、味や香りにこだわる楽しみ。チョコレートにも、こうした産地主義、原材料の特徴をそのまま楽しみたいという流れが起こっている。これって男性好みの傾向ではないか。
ブレンドしないシングルオリジンのチョコレートを作るためには、良質なカカオでないとなかなか難しい。砂糖などの甘みも、必要最低限に抑えられ、ブレンドせずにおいしく食べられるカカオは貴重なものなのだ。
米サンフランシスコが本拠地の「ダンデライオン・チョコレート」はB to Bチョコレートのファクトリー&カフェだ。2016年に東京・蔵前に日本店がオープンして以来、行列ができることもある人気店として、一躍名を馳せた。
「B to B(Bean to Bar)」とは、カカオ豆の買い付けから選別、焙煎、磨砕、調合、成型まで、すべてを自分たちの工房でおこなう店のこと。日本ではまだまだ貴重な存在だ。
男性客も多いこの店で人気のバーを尋ねると、芹沢茉澄さんは、
「サン・ファン・エステートは男性向きだと思います。ここはトリニダード・トバゴで最も古い農園のひとつで、昔ながらの農法と道具でカカオを作っています。クリーミーなエスプレッソの香りとタイムの風味に加えて、スパイス感もあります」
お薦めはまだある。タンザニア南部にあるキロンべロ地区にある、「ココア・カミリ」のバーだ。2600戸の農家にオーガニック認証を与える、ネットワークプログラムを持つ発酵所から届くカカオという。
「ココア・カミリは、クラシックなカカオの香りに加えて、グレープフルーツのような果実感、クリーミーなキャラメルの風味が最後に残ります」(同)
カカオ豆は収穫後、発酵・乾燥させてから出荷される。その後、焙煎などの工程を経て、複雑な香りと味が生まれてくるのだ。
ダンデライオン・チョコレートの店舗に行くと、運が良ければ、チョコレートができるまでの工程を見ることができる。
バーに貼られたシールには、ロースト・プロファイラーの名前も入る。日本人の手による蔵前産のバーの種類もどんどん増えているそうだ。CEOの堀淵清治さんはこう語る。
「大人のチョコです。フルボディーの赤ワインやコニャック、ウイスキーのつまみとしてぜひ楽しんで頂きたい。ワインボトル一本がすぐ空きますよ」