●時間の流れが変わった
綿矢:いつが一番大変だった?
金原:やっぱり1人目の最初の1年かな。『マザーズ』を書く前はまさに育児ノイローゼになって。保育園がなかったら何らかの事件を起こしてたんじゃないかって思う。今でも保育士さんには頭が上がりません。
綿矢:あぁ、ドキドキしちゃう。『私をくいとめて』は、子どもが昼寝したときや夫に見てもらっているときに書き直したり、校正したりしてすごく大変だった。私、体力がないんです。もともと文系で。
金原:文系を言い訳にしたな(笑)。私もそうだけど。底力ないよね。
綿矢:そう、底力、ない(笑)。以前は自由に時間を使えたから書けたけど、子育ての合間に書いたり普通だったら休んでいるときに書いたりしていると、まず体力が切れちゃう。集中できひんから苦しいとか、アイデアが出ないから苦しいとかよりも、机に向かうことが苦しい(笑)。書くことは好きだからまだいいけど、校正で「ここはこうしたほうがいいのでは?」なんて指摘が入ると、もうわからなくなる。目がかすんで何も見えない……。校正作業は現在進行形でキツいです。マラソンとかしたほうがいいのかな。でも、いまの状態で運動を始めたらより疲れるよね?
金原:今は温存だよ、温存。
綿矢:温存の仕方、教えて!
金原:一人遊びできる子に育てたほうがいいよ(笑)。あんまり構いすぎると後が大変。本を読むように勧めていったり。一人で没頭する子?
綿矢:何かやり始めたら集中してるかも。一人遊びできるおもちゃを与えるか。
金原:子どもによって違うだろうけど、子どもが2人になって私はかなり楽になったかな。
綿矢:2人で遊んでもらうの?
金原:そう。結果論だけど、本当に時間の流れ方が変わった。2人が結びついたことで、自分が個に戻れた気がしてる。
(構成/フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2017年2月6日号