では、脳内報酬系の異常というメカニズムがわかっている薬物依存症やアルコール依存症では、薬でこの脳の異常を抑えることはできないのだろうか?
「ニコチン依存症では、タバコを吸いたいという渇望を抑える薬が研究されてきましたが、動物実験では効果があっても、実際には治療効果はほとんど出ませんでした。欲しいという欲求を多少抑えられても、本人が喫煙という行動自体を抑えないと、たいていの人は喫煙してしまうからです」(和田部長)
アルコール依存症では、脳に作用して欲求を抑えるアカンプロサートカルシウムという治療薬が13年に登場した。ただ、薬を飲み続ける必要があり、決定打にはならないという。
そのため、依存症の治療は、認知行動療法などの精神療法が中心だ。アルコール依存症やニコチン依存症だけでなく、薬物依存症の治療体制も最近は整いつつある。
「薬物乱用は犯罪ですが、薬物依存症は脳に異常が起きている病気。専門の病院で治療を受けてほしい」
と和田部長は話す。(編集部・長倉克枝)
※AERA 2017年1月30日号