
不世出のアーティスト、デヴィッド・ボウイが空へ還って1年。ファンが待ちわびた大回顧展「DAVID BOWIE is」が幕を開けた。「地球に落ちて来た男」の芸術に再びひれ伏す時がきた。
「あんまり面白いから2回、行っちゃった!!」
ロンドンの友人が興奮してSNSに書き込んでいたのが4年前。英ヴィクトリア・アンド・アルバート(V&A)博物館で2013年に初開催され、同博物館の前売り動員記録を塗り替えたデヴィッド・ボウイ大回顧展がついに日本に上陸した。日本でも「最低2時間かかる。もう一回来る!」「来る人はトイレを事前にすませて!」など内容の濃密さをめぐる声がSNSを駆け巡っている。
●渇望感なだめる開催
まさに満を持しての上陸である。ロンドンでの大成功以降、3年がかりでベルリン、シカゴ、パリなど世界主要都市を巡回するも日本開催のニュースはいっこうに聞こえてこず、15年になって本展関連のドキュメンタリー映画が地域限定で上映されたのみ。このまま日本はスルーされてしまうんだろうか?と音楽ファンがジリジリしていたら、昨年1月、なんとボウイさまご本人が突然ご逝去。追悼モードの中で、もう一度ボウイに会いたい! 触れたい!という渇望感が高まりに高まっていたのだ、日本では。
「DAVID BOWIE is」(朝日新聞社など主催)は、あふれる渇望感をなだめてあまりある圧倒的な情報量と整理整頓のクオリティーで際立っている。元祖ヴィジュアル系にして元祖コスプレ芸を演じたボウイなので、ジギー・スターダストやアラジン・セインなどのキャラクターのコスチューム一式をいやというほど見られるばかりか、自筆歌詞、手描き絵コンテ、インタビュー映像などファンにとってはまさに宝物殿さながら。さらに「アートは時代を映す鏡」と考えるイギリスの博物館のお家芸か、ボウイを育んだ「戦後英国」の時代精神を解説するために、当時使われていた配給券まで並べられている。