
北欧映画の快進撃が止まらない。とりわけ、スマッシュヒットを連発しているのがスウェーデン映画だ。現在、今年の締めくくりにふさわしい一本、「幸せなひとりぼっち」が公開中だ。
スウェーデン映画といえば、「第七の封印」「野いちご」などで知られる監督のイングマール・ベルイマンや美貌の女優イングリッド・バーグマンを思い出す人は少なくないだろう。
だが、それだけではない。ここ数年を見ても、ロングランヒットとなった「シンプル・シモン」や「100歳の華麗なる冒険」「さよなら、人類」など、個性的な作品が次々公開されている。そして、今年を締めくくるスウェーデン映画が「幸せなひとりぼっち」だ。スウェーデン国内では、史上歴代3位の興行成績(2016年12月現在)を記録。脚本も担当したハンネス・ホルム監督は、スウェーデン映画の特徴についてこう話す。
「挙げるとすると、ブラックユーモア。昨今はノワールものが多い。犯罪小説の書き手はほとんど女性。それらを男性が映像化するのがはやっています」
●現代のラブストーリー
この作品もブラックユーモアにあふれつつ、「底知れぬ悲しみが、愛と人間の偉大さと卑小さを描いた作品」だ。
主人公は文化住宅で独り暮らしをする頑固な59歳、オーヴェ。地域のルールが守られているのかを見回り、近所から煙たがられる存在だ。愛する妻を半年前に亡くして心を閉ざしていた彼は、ある日、妻のもとへ旅立とうと家で首を吊ろうとする。ところが、向かいに越してきたパルヴァネ一家に邪魔をされてしまう……というストーリー。世界で280万部以上売れたというベストセラーが原作で、ホルム監督は最初、ヒットしすぎていることを理由に映画化のオファーを断ったという。だが、
「小説を手にしたら一晩で読み切ってしまった。いわゆる頑固じじいの話だとは聞いていたのですが、そこには予想もしなかったすてきなラブストーリーが描かれていたんです」