1940年ごろの東京では、食糧増産のための「空き地利用」がさかんに行われた。写真は麹町区役所(当時)近くにもうけられた畑。区役所に農具やバケツが備え付けられ、青年団や女子青年団が時間を見つけては耕した(c)朝日新聞社
1940年ごろの東京では、食糧増産のための「空き地利用」がさかんに行われた。
写真は麹町区役所(当時)近くにもうけられた畑。区役所に農具やバケツが備え付けられ、青年団や女子青年団が時間を見つけては耕した(c)朝日新聞社
日本の穀物自給率は先進国で一番低い(AEARA 2016年12月5日号より)
日本の穀物自給率は先進国で一番低い(AEARA 2016年12月5日号より)

 健康志向の高まり、高齢化、働く女性の増加など、食卓を取り巻く環境は大きく変わった。食品メーカーや卸業者など食に関わる会社は、こうした動きをビジネスチャンスと捉える。これからのニッポンの食卓とは? AERA 12月5日号では「進化する食品」を大特集。日本の食卓に迫る危機についても取材した。

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 近い将来、日本の食糧事情は危機的状況に陥るかもしれないという。原因をつくったのは、政府だけでなく、安価な食糧を求め続けた国民にもある。

 20××年、食糧輸入がゼロになって数カ月経ったある日。小学生の長男が学校からチラシを持ち帰ってきた。

「食べ物が少ないから、これを参考にしなさいって、先生が」

 そこには献立が記されていた。

【朝食】ご飯茶碗1杯、ふかしイモ2個、ぬかづけ1皿。
【昼食】焼きイモ2本、ふかしイモ1個、リンゴ1/4個。
【夕食】ご飯茶碗1杯、焼きイモ1本、焼き魚1切れ。

「なんかイモばっかりで嫌だね」

 ……そんな話が冗談ではなく、現実に起きるかもしれない。

 総務省統計局の「世界の統計2016」によると15年の世界人口は約73億人。25年には80億人を突破するとみられている。人口増加は労働力が増えて経済を押し上げる要因になるが、一方で地球上の資源と環境に大きな負荷をかける。

●穀物生産の半分は飼料

 世界の穀物市場をみると13年から生産量が拡大し、3年連続で豊作。米国の農務省によると、16?17年の世界穀物生産量は25億4249万トンで史上最高を更新する見通し。4年連続の豊作となれば供給は十分に足りていると見られるが、資源・食糧問題研究所所長の柴田明夫氏は、消費量の推移に注目する。

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