「仮に高さに応じて固定資産税評価額を±10%の幅で調整することになったとすると、中層階の評価額が5千万円なら、低層階が4500万円、高層階が5500万円。しかし、現状の高層階の売買価格はその3倍は下りません。相続時に数千万円単位の節税効果が発生することには変わりないのです」

●見直し対象は「新築」

 仮に±20%の幅で調整しても、同様。毎年発生する固定資産税にしても、評価額5千万円なら単純計算で70万円。これが6千万円になったところで84万円になる程度。数億円単位の資産を有する富裕層にとっては誤差の範囲での増税にすぎないのだ。

 そもそも、高層階の物件のみが節税対策商品として人気化しているわけではない。タワマン節税を売りに富裕層の資産運用コンサルティングを行っているスタイルアクトの担当者が話す。

「高層階は新築物件だと特に高いプレミアムがつくため高値で売り出されますが、その半面、1年経って中古物件になると値崩れが激しくなる傾向にあります。一方、中・低層階は値崩れしにくい。相続後に購入価格よりも高い値段で売り抜けられるようにと、好んで中・低層階の物件を購入される投資家も少なくありません」

 前述したように、マンションは全体の評価額を算出したうえで、床面積に応じて固定資産税評価額が決められる。総戸数の多いタワマンでは、各住戸における土地の持ち分が小さくなるため、他の住戸と比較して評価額を抑えることができるのだ。

 見直し対象が「新築」に限られていることを考えれば、中古という抜け穴もある。「“億ション”という言葉が死語になるほど都内の高層マンションは高騰」(新倉氏)しており、中古市場でもタワマン物件が高値で売買されているからだ。税制改正案がまとめられるまでは楽観できないが……タワマン人気が衰える気配はなさそうだ。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2016年11月14日号

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