「けやきひろば」の会場は、なかなか会えない造り手と直接話したり、飲み比べセットをシェアして語り合ったりと熱い客でいっぱい(撮影/まつざきみわこ)
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 ビールの祭典が「オクトーバーフェスト」と呼ばれるように、空気も爽やかになる秋はまさにビールの季節。国内市場が縮小する中、気を吐いているジャンルがある。クラフトビール。今、日本で花開いた理由とは。

 9月15日から5日間、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で開催された「けやきひろば 秋のビール祭り」。全国のブルワリー(ビール醸造所)が89ものブースを出店し、400種類以上のクラフトビールが提供された。あちこちで「乾杯」の声があがり、席を確保するのも難しいほど。酔いすぎ防止のミネラルウォーターを片手に、10時間以上滞在する猛者もいた。

 ビール愛飲家たちのどこかポップでほがらかな空気が会場にあふれ、いるだけで楽しくなってくる。この熱気と勢いそのものが今の日本のクラフトビールブームを表しているようだ。

●60年代の米国で誕生

 今のブームの源流は、米国のクラフトビールブームにある。

 1960年代ごろから、ドイツやベルギー、英国などのスタイルを元に、米国で新たなビールが造られるようになった。ブルワリーが、製法や製造過程はもちろん、パッケージングから販売までの工程をすべて手掛けたことから、職人が丹精込めて作り上げた「手工芸品」を意味する「クラフト」という言葉が使われるようになった。

 米ブルワーズ・アソシエーションが掲げるクラフトビールの定義は、(1)小規模であること(2)独立していること(3)伝統的であること、の三つ。

 日本では、94年の酒税法改正が大きなきっかけになった。ビールの製造免許を取得するのに必要な年間最低製造量が2千キロリットルから60キロリットルにまで引き下げられたのだ。これによって、各地で「地酒」ならぬ「地ビール」が盛んに造られるようになった。

 ところがこの時点では、重点が「街おこし」という造り手も多く、品質を置き去りにしたブルワリーが淘汰されるとともに、地ビールブームは沈静化した。

 しかし、ブームが去ってもずっと変わらず、研究を続けるブルワリーも残った。10年近い時を経て、技術は格段に向上。そこに米国からクラフトビールの波が押し寄せ、若い世代を中心に火がついた。

 折しも、今年はドイツで「ビール純粋令」が公布されて500年の節目の年だ。純粋令は1516年、原料も造り方もバラバラで時に劣悪な品質の製品も出回っていたビールの品質を安定させるため、原料を麦芽、ホップ、水に限定(その後、酵母を追加)。ビールが世界的なアルコール飲料に飛躍するきっかけになったとされる。

 明治時代に始まり、欧州などと比べれば歴史が浅い日本のビール。経済成長と人口増加の波に乗って「大量生産大量消費」を優先し、味などの個性が目立たない時期が最近まで続いた。地ビールブームから20年以上を経て、日本のビール文化が一皮むけたことが、最近のクラフトビールブームを呼んだと言えるだろう。

●大手メーカーも参入

 実際に、ビール大手もクラフトビールに参入。一昨年、クラフトビール大手のヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)とキリンビールが業務資本提携し、コンビニに置かれるようになったことも、クラフトビール人気に一役買った。

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