「玄机科技」の出展ブース。平面のアニメ絵を意味する「二次元」という日本の俗語が、そのまま中国語としても使われている(撮影/河嶌太郎)
「玄机科技」の出展ブース。平面のアニメ絵を意味する「二次元」という日本の俗語が、そのまま中国語としても使われている(撮影/河嶌太郎)
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 東京ゲームショウが“変貌”している。ガラパゴスだった日本のゲーム市場は今や昔。海外企業の出展が加速度的に増えているのだ。なぜか。

 千葉市の幕張メッセ。10時の開場を前に、朝から長蛇の列が建物の外へと延びていた。国内最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2016」の開幕を前に、曇り空の下、ゲーム業界関係者がこぞって列に並んでいた。

 列からは、日本語のほかに、英語や中国語が聞こえてくる。半数近い人が海外から訪れているようだ。会場内でも、いたるところで外国語が飛び交っていた。セガやコナミなどの国内大手ゲーム会社と肩を並べて、インテルや2Kといった米国系企業が広々と出展していた。

●市場拡大狙う海外勢

 とりわけ印象的だったのが、スクウェア・エニックスの隣で負けじと出展していた中国・杭州の企業「玄机科技」。何を展示しているのか、ブースにいる男性に尋ねてみた。

「これは秦の時代の動乱を描いた3Dアニメ『秦時明月』のスマートフォンゲームです。中国では5回もアニメ化された大人気作品で、日本の人にもぜひ面白さを知ってもらいたいです」

 中国で大ヒットした作品を日本でも。虎視眈々と市場拡大を狙う熱意が中国語訛りの日本語からにじみ出ていた。

「東京ゲームショウ2016」は、9月15日から18日までの4日間にわたって開かれた。今年はVR(仮想現実)ゲームが脚光を浴びた一方で、国際化が著しかった。昨年、海外からの出展が国内より12社多く、初めて海外が国内を上回った。それが今年は国内269社、国外345社と、80社近くも上回ったのだ。

●試遊から商談の場へ

 なぜ海外企業の出展が増えているのか。都内のゲーム開発会社で働く20代男性はこう話す。

「数年前からゲームのダウンロード販売が確立し、自前で流通ルートを持たない開発会社でもゲームを売れるようになりました。日本の主要ゲーム会社は10年ほど前から開発を海外の企業にも発注することが多くなりましたが、こうした海外の開発会社が近年力をつけてきています」

 もちろん、運営側の地道な努力もある。東京ゲームショウを運営する、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の理事を務めていた馬場章さんはこう振り返る。

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